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2022年9月12日2 分

コンセプト再考 ① コンセプト迷走

「コンセプトって何?」 都市開発などのプロジェクトでは、まず始めるのが「コンセプトづくり」です。実際に弊社への依頼で一番多いのが、このコンセプト策定業務です。

「この開発のコンセプトを策定してほしい」「コンペ提案にあたって、提案事項は揃っているので、コンセプトとしてまとめてほしい」などの依頼になります。

コンセプトって基本方針なの? 全体を表現するキャッチフレーズなの?

あと業務依頼を取り消される事もあります。「役員会で、設計図は書けないけれど、コンセプトくらい社内で作成するように指示された」という感じです。

コンセプトはそんなに簡単に社内で作れるものなの?

コンセプトという言葉が使われ出したのは、経営分野において1960年代に「マーケティング活動の方向性を決める考え方」と言われます。(元東京富士大学学長:井原久光氏)

建築や都市計画においても、高度経済成長期の、作れば売れる時代から、1970年代の市場調査を行うマーケティング重視の時代辺りからコンセプトという視点が浸透し始めました。

商品開発においては、関係者はそれほど多くありませんが、都市開発では、初期の開発構想の段階から、設計やテナントリーシング、開業販促、管理運営と様々な人たちが関わり、それぞれの立場でコンセプトを捻りだしているのが実情です。さらに地域連携などコミュニティへの参加や地球環境への配慮も重要視され、開発コンセプトはますます抽象化してしまっています。

それでなくても、人は人が意図した言葉通りに意味を受け取ってくれません。「コンセプト」は、一種のお題目のように扱われて、ほとんど形骸化しているのが現状ではないでしょうか?あるいは開業販促時のキャッチフレーズ的なキーワードをコンセプトにしているのかもしれません。

もとより各担当者がそれぞれの想いをバラバラに発信しても、制作プロセスでは混乱をきたしますし、開業のコミュニケーションプロセスでも全くインパクトを持たず、開発プロジェクト全体が、無理、無駄の塊になってしまいます。かといって以前のように市場調査からポジショニングが明確になるわけでもありません。ましてや何処かの偉い人が提示する「神託のようなキーワード」が通用するはずがありません。

企画・構想段階のコンセプトは、単なるお題目ではありません。そして本来はそのアウトプットが設計与件として反映されるべきものだと考えます。

今シリーズは、都市開発におけるコンセプトの位置付けと策定方法そして設計与件としての活用方法などについて考察してみたいと考えます。