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2023年8月3日3 分

今なぜ 「中間領域」を考えるのか? 縁側ストラクチャー ①

【内容】

1.巨大化するビル、都市開発

2.オープンエア・ニーズの高まり

3.居心地の良い屋外環境(=縁側ストラクチャー)を考える

1.巨大化するビル、都市開発

近年のオフィスビルは、フロア面積が巨大化しています。

2023年春に開業した「東京ミッドタウン八重洲」のオフィスの基準階面積は1,240坪になります。

新設オフィスへの移転は、「分散していたオフィスを統合して、コミュニケーション効率を高める」という理由が多いので、六本木ヒルズ森タワー(1,300坪)に始まり、紀尾井町タワー(1,000坪超)など、フロア面積の巨大化傾向が続いているのです。

オフィスの最上級ランクを表す 「Sクラスビル」では、延床面積2万坪以上、基準階面積500坪以上とされています。

新宿の超高層ビル(基準階面積:新宿センタービルが622坪、新宿野村ビルが382坪)と比較すると、近年のビルは、随分とズングリしていることが分かります。

ショッピングモールの巨大化も顕著です。

710店が軒を連ねるイオン越谷レイクタウンを筆頭に、ラゾーナ川崎プラザ(330店)、ららぽーと豊洲〈214店〉と、200店以上を集める開発がザラになっています。

さらにタワーマンションも巨大化しています。

THE TOKYO TAWERS(2棟2,800戸)ワールドシティタワーズ(3棟2,090戸)、アーバンドック・パークシティ豊洲(1,481戸)など、ベイエリアに林立するタワーマンションは、軒並み1,000戸以上になっています。

近年の都市開発やビルは、(国際)競争力を高めるため、ドンドン巨大化しているのです。

2.オープンエア・ニーズの高まり

経済成長期の日本は、雨の多い気候に対応するために、オープンモールは不利だとされ、アーケードや地下街が発達してきました。

成熟社会化、少子高齢化に伴い、この動向が転換しています。

2016年にリニューアルされた「南池袋公園」は、鬱蒼とした樹々に囲まれた薄暗い公園から、明るい芝生広場とカフェのある開放的な公園に一新して、今では池袋のシンボルの一つになっています。

コロナ禍を経て、オープンエア・ニーズはさらに高まっています。

P-PFIで整備される公園カフェはもちろんのこと、街路沿いでもテラス席に人がたむろするようになっています。

丸の内などの都心部の街づくりでは、クリエイティブな活動を促すためには、グランドレベルでの交流が有効であることが、共通認識になっています。

3.居心地の良い屋外環境(=縁側ストラクチャー)を考える

グランドレベルでの活動、オープンエア・ニーズが高まっているのに、ビルの足元には、「公開空地」が広がっているばかりです。しかもビルはドンドン巨大化していきます。

九州のある百貨店のリニューアルオープンで、「重厚な古材がふんだんに使われた内装・什器の中で、商品がとても貧弱に見えた」記憶があります。購入意欲など湧きませんでした。

巨大な構造物は、人の存在感や行動を圧倒するのです。

巨大化していくビルと、人の屋外活動との間の溝を埋める「中間領域のプランニング」が重要ではないでしょうか。

ホテルやレストランなどでは、居心地良い環境を作り出すために、「インテリアデザイン」が施されます。

それに対して建築の外周部では、植栽などによる造園計画があるだけです。※雑工事扱いで、建築予算を圧縮する際に、真っ先に削られる項目になっています。

ウォーカブル・シティのモデルとされる、米国ポートランドの都市局では「地上30ft(約10m)以下の世界観が非常に重要」をコメントされています。

巨大化するビルの足元で、植栽だけではなく、建築的な造形物を含めて、居心地の良い屋外環境を総合的に計画していく必要があると考えます。

建築の内と外、プライベートとパブリックとを丁寧に繋いでいく「中間領域のプランニング」を、日本的な「縁側」になぞらえて「縁側ストラクチャー」と設定します。

今シリーズでは、次世代の都市における「縁側ストラクチャー」のあり方を検討します。