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4月10日3 分

方策3:お祭り感覚 都市暮らし ⑨

【内容】

  1. ガス抜き装置としてのお祭り

  2. 非日常の効用

  3. お祭り参加での繋がり

 1.ガス抜き装置としてのお祭り

日本人は普段は恥ずかしがり屋で、控え目で礼儀正しいという印象があります。しかし一方で、新橋で酔っ払ったサラリーマンの変節ぶりがよくニュースになるように、抑圧され鬱積したストレスを、酒の力を借りて一遍に噴出させるところがあります。

ただし、これは何も現代に限ったことではなく、日本には伝統的に「お祭りによるガス抜き」の仕組みがあったのです。

お祭りの夜に限っては自由な男女交際も認められたといいます。

閉鎖的なコミュニティの村社会に設けられた、巧みなガス抜き装置が、お祭りだといえます。

また、昔の村祭りの仕切り役は、毎年持ち回りになっていました

20軒あれば20年に一度「仕切り役」の順番が回ってくるわけです。

これは収入に関係なく、その祭りについては責任者として、上座につけるということです。

普段は村の庄屋さんに頭が上がらなくても、その祭りに関しては、仕切って指図ができるわけで、これもガス抜きの仕組みとして、有効に機能していたのではないでしょうか。

2.非日常性の効用

そして「お祭り」の重要な役割に、「非日常性」の提供にあります。

「お祭り」には、日常での価値をあえて否定するような要素が含まれています。例えば「静謐」に対する【喧騒】、「安全」に対する【危険】、「節約」に対する【浪費】などの非日常性です。

日常生活に完全に満足しているという人は、ほんの一握りでしょうから、ほとんどの人は、日常生活の中で、必ず「ストレス、憂さ」のようなものを溜め込んでしまいます。

それらが爆発・暴走しないように、適度に「ガス抜き」して、生きている実感を得ることが有効です。

屋内のイベントスペースではなく、普段見慣れた街並みを、時間限定、空間限定で非日常状態にすることで、膠着した日常をシャッフルする効果があるのです。

 3.お祭り参加での繋がり

「踊る阿呆に、観る阿呆、同じ阿呆なら、踊らにゃ損損。」とは、阿波踊りの掛け声ですが、

盆踊りの輪の中に入り、みんなで踊ったりや神輿を担いだりする一員に加わる事は、私心を脱ぎ去り一つの事に尽くす達成感をもたらしてくれます。

お祭りを「見に行くだけ」ならイベントと変わりませんが、一歩進んで「参画する関係」になった時には、日常のヒエラルキーや役割と関係なく一体感を味わえる機会になります。

近年ハロウィンが急速に盛り上がり、クリスマスに次ぐ年間行事に成長しています。

ハロウィンの魅力は何と言っても「仮装」出来る事で、一種の変身と言えます。

東京渋谷や大阪道頓堀は仮装した若者たちで溢れ、街丸ごと仮装パーティ状態になります。

普段の自分ではない非日常感を楽しみ、SNS 受けも含めて仲間と一緒に騒げるところが、好評な要因のようですが、これも「お祭りの参加体験」と言えるのではないでしょうか。

ふだん真面目で勤勉なイメージの日本人は、お祭りの「ハレ」を華やかに執り行うことによって、日常の「ケ」をリセットしているのかもしれません。

お祭りでは、大勢の人が集い、笑顔になり、いつもの街並みが全く違う景色に見え、新しい縁が生まれます。

お祭りは「日常の中に非日常を持ち込むガス抜き効果」によって、地域のあらゆるコミュニティを、「情報交流させる機会」になっているのです。