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2021年10月1日2 分

都市づくり5.0 Beyondコロナの都市づくり50のヒント(48) 都市の幸福論

Ⅰ幸福論の現在位置 /Ⅱ 幸福の定量化 /Ⅲ 都市づくりへの展開

Ⅰ幸福論の現在位置

「モノの豊かさからココロの豊かさへ」などのコンセプトが提唱され出して久しいと思います。ノーベル賞を受賞した心理学者ダニエル・カーネマン教授による「年収と幸福度は一定程度までは比例関係にあるが、年収7.5万ドル(約800万円)程度を超えると幸福度は頭打ちになる」という研究成果は有名です。日本でも成熟社会化とともにGDPなどの経済指標だけでない評価軸の模索が盛んで、政府が2021年度の「骨太の方針」の中でウェルビーイングを指標化する動きがあると言います。

「精神的な豊かさ=幸せの追求」というのが分かりやすいのですが、「幸せ」の概念はあいまいで多様な解釈で議論されてきました。直近20年ほどの研究では「生科学的に良い状態に向かう行為」と定義され、急速に体系化が進んでいます。いわゆる「ポジティブ心理学」と言われる分野で、1998年に米国心理学会長のマーティン・セリグマンとクレアモント大学のミハイ・チクセントミハイ教授によって提唱されました。「幸せとは“状態”ではなく“行為”である」という視点で、それは「訓練で改善できる」とされました。その成果として健康や生産性の向上(=幸せな状態)が得られるというものです。個人の幸せを高める能力(心の資本)として「HERO」の頭文字でまとめられた「4つの前向きな姿勢」が示され、幸せな集団の特性として「FINE:信頼できる関係」の頭文字で表される4つの特性が提示されています。「仕事がうまくいくと幸せになる」のではなく、「幸せだから仕事がうまくいく」という因果関係が研究により明らかになったのです。幸せだから難しい課題に対しても積極的に挑戦することで創造性を発揮し、欠勤率や離職率が下がり、結果として生産性が高まるというわけです。具体的には営業職で30%、創造性では300%も生産性の向上が見られ、1株あたりの利益が18%も高いというエビデンスが寄せられたそうです。(矢野和男著「予測不能の時代」)

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