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「学ぶ」そして「教える」とは何か?:「身体ルネサンス」の街づくり ⑤

【内容】

  1. 人間ならではの優位性の危機

  2. 「学ぶ」のゴールを考える

  3. 教える事の再定義




1.人間ならではの優位性の危機

「身体性とは、認知主体の内外で生じる相互作用である」

人間は、外部の環境と相互作用できる「身体」によって、知覚や体験を得て、そこから学ぶことで、高度な知能を獲得・蓄積してきました。

この「実践・知覚・学習」が「情報でしか学習できない」、 AIとの差異と言えます。

人間は脳の発達で「考える」様になったのですが、「人間らしく」生きていく上では「実践・知覚」が重要と言う事です。

ところが脳は「認識したものが現実」と定義し、都市化に伴い「脳化社会」が発達していきます。自然・身体性・感覚が駆逐されると共に、「わかる(=認識する)」と「できる」の区別が曖昧になってきています。

本来は「身体性実践主義」を保持してきたはずの日本でさえ、身体性や実践・知覚の機会がおざなりになっています。


2.「学ぶ」のゴールを考える

「学ぶ」のゴールは、どこでしょうか?「わかる(=認識する)」だけでは、再現性につながらないため不十分で、「そうか」と理解するだけではなく、当たり前にできるように「体得する」ことが、本来のゴールでした。

そして体得には、いわゆる「ラーニングカーブ」「アハ体験」と言われるものが有り、一定期間の習熟が必要になります。自転車やギター、茶道など様々な体得体験が例示されますが、今まで見えなかった「景色」が、ある水準を超えると、急に「見える様になる状況」が「学ぶ」ゴールなのです。

「体得(=見る目が変わる)」ことをゴールにすると、「学び」には、受動的に教師から与えられるものではなく、主体的な行動が必要になります。脳化社会におけるインプット偏重ではなく、身体性を伴う実践(=アウトプット)による習熟が重要ということです。


従って、学びのステップは、

1、その知を意識して実践する

2、身体と環境との間の「新しい関係性」をことば化する

というところまで、プログラム化される必要があるのです。

実践体験を通じた新しい関係性を知覚し、情報化(ことば化)するプログラムが、学びなのです。

そして何より学ぶ姿勢が重要になります。

古来からの箴言に「我以外皆我師(自分以外の人でもモノでも皆、自分に何かを教えてくれる先生だ)」と言う言葉こそ「学び」の姿勢を表しています。

日常の中のあらゆる事象との関わりを、これまでの知識と経験から想像する事、身体で実践し知覚し考える姿勢が、重要なのです。


3.教える事の再定義

「学ぶ事」のゴールとステップが変わると、その対になる「教える事」の定義も変わります。

「教える事」は、単に「要するに」などのコト・エッセンスを伝達しただけでは、不十分になります。具体的な事象としてのモノと、それを抽象化したコトとを、ワンセットにして「教える」必要があるのではないでしょうか。

例えば、「坂道の上下でのコミュニティの分断」と言う事象についても、「傾斜した坂道」を体験し、そこで得た「日常的な往来の困難さ」を知覚し、それを元にして「この坂道の上下を繋いだコミュニティの成立は難しい」という知見に至るプロセスが、「学び」になります。

モノ「傾斜のある坂道」×コト「その上下ではコミュニティが分断」をセットにして伝達することによる「学びの機会の提供」こそ、「教える事」といえます。

さらに言えば機会の反復による「学ぶ姿勢の伝授」こそが「教える事」のゴールではないでしょうか。

脳化社会の進行した都市では、このプロセスを割愛した「コトだけ」を流布する風潮が強くなっている事が懸念されます。

近年の街づくりにおいて、ワークショップが多用されるようになりました。

従来のように「上から教える」のではなく、「お互いに気づく」ことが、より重要だと言う認識が定着したのではないでしょうか。

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