【内容】
1.なぜ接客業の生産性は低いのか
2.自動化・機械化への対応
3.「消える接客」「残る接客」
1.なぜ接客業の生産性は低いのか
前回は日本の接客業が、伝統的な「おもてなし文化」と米国式「合理化システム」が混在した状況にあることを確認しました。
この辺りが「生産性が低い」と指摘される日本の接客業の課題の真因のようです。
生産性とは、一人の従業員が生み出す成果であり、「付加価値(=売上−原価)」÷「労働量(=人数×時間)」で算出されます。
「日米産業別労働生産性水準比較(2016年)」によると、米国を100とすると、日本の化学産業は143.2 、機械産業は109.6なのに対して、小売業は38.4 、宿泊業は34.0と言う低い水準になっています。
一方で日本生産性本部が行った「日米サービス品質差調査(2017年)」では、米国を1とすると、(ファミリー向け)レストランでは、1.05〜1.11 、(エコノミー)ホテルでは1.09〜1.28の様に、ほとんどのサービスで日本の方が「質」が高いと評価されています。
「質」の高さと「生産性」の低さが、日本の接客業の特徴なのです。
2.自動化・機械化への対応
生産性を高めるためには、自動化・機械化への対応が不可欠です。
技術革新は、以前から進んでいましたが、コロナ禍における「対面接客の回避」、そしてアフターコロナの「人手不足」を踏まえて、自動化・機械化の導入が一気に加速しています。
飲食業においては、大手チェーンを中心に、受付や注文、会計の機械化をはじめ、調理、盛り付け、配膳ロボットなども、導入されています。
今後は、飲食業・宿泊業共に、下記の様な使い分けが普及するのではないでしょうか。
①セルフ:受付・チャックイン、注文、下膳、会計・チェックアウトなど
②ロボット:案内、調理・盛り付け・食洗、配膳・荷搬、警備・清掃など
③人手:調理・盛り付けの一部、 催事・VIP対応、清掃の一部、トラブル対応など
ただ、飲食業・宿泊業は、中小企業により運営されている施設も多く、経済的及び空間的な制約から、導入が難しいケースが多いと予想されます。
3.「消える接客」「残る接客」
上記の様な技術革新が進むと、「2030年には、接客の80%が消滅する」とも言われます。
接客には「①情報を与えてくれる②案内・会計をしてくれる③幸福感を与えてくれる」の大きく3つの役割があり、最初の2つについては AI やロボットとの代替が進みますが、3つ目の「幸福感を与える」は「圧倒的に人が得意」な領域なのです。
顧客育成コンサルタントの斎藤孝太氏は、「幸福感を与えてくれる」について、3つの接客法を解説しています。
①共感接客:お客様が言葉に表せない欲求を「察する接客」で、お客様の話を時系列で積み重ね、筋道を立てて思考する傾聴と想像力が求められます。
②共振接客:接客を通して、身近な専門家としてお客様の未来を伝えて「なるほど」と納得と希望をもたらす力が求められます。「ココロが動かす接客」です。
③共有接客:商品・サービスを享受したことから生まれる感情を、スタッフと「分かち合う」ことによって、「体験を共有できる接客」です。
現在、行われている接客の内、自動化・機械化が可能な80%は、合理化が可能ですが、「残り20%」は、人による接客の必要性が高く、ずっと残ると考えられます。
共感、共振、共有を通じて、「人に幸福感を与えてくれる接客」こそ、人間にしかできない、ずっと残る接客だと言う事です。
Comments