【内容】
1.お祭りの非日常性
2.お祭りの参加体験
3.ガス抜きの仕組み化
1.お祭りの非日常性
一般的にシンクタンクなどが提示する「お祭りの魅力・効用」は、下記の4つです。
①経済効果
②交流の場、信頼構築
③歴史・伝統の継承
④観光活用
では、何故このような効用があるのでしょうか?
そもそも「お祭り」の重要な機能は、「非日常性」の提供にあります。
日常生活に完全に満足しているという人は、ほんの一握りでしょうから、ほとんどの人は、日常生活の中で、必ず「ストレス、憂さ」のようなものを溜め込んでしまいます。
それらが爆発・暴走しないように、適度に「ガス抜き」して、生きている実感を得るための、「非日常の時間・空間」が必要で、「お祭り」がその役割を担っているのです。
従って「お祭り」には、日常での価値をあえて否定するような要素、例えば「静謐」に対する【喧騒】、「安全」に対する【危険】、「節約」に対する【浪費】などの非日常性を含むことになります。
一方で、社会生活の一部として、それらの要素は一定のルールでコントロールされる必要があります。
2.ガス抜きの仕組み化
日本人は普段は恥ずかしがり屋で控え目で礼儀正しいという印象がありますが、新橋で酔っ払ったサラリーマンの変節ぶりがよくニュースになるように、抑圧され鬱積したストレスを、酒の力を借りて一遍に噴出させることがあります。
ただし、これは何も現代に限ったことではなく、日本では伝統的に「お祭りによるガス抜き」の仕組みがあったのです。
お祭りの夜に限っては自由な男女交際も認められたといいます。
閉鎖的なコミュニティの村社会に設けられた巧みなガス抜きの仕組みが、お祭りだと考えます。
また、昔の村祭りの仕切り役は、毎年持ち回りになっていました。
20軒あれば20年に一度順番が回ってくるわけです。
これは収入に関係なく、その祭りについては責任者として、上座につけるということです。
普段は庄屋さんに頭が上がらなくても、その祭りに関しては、仕切って指図ができるわけで、これもガス抜きに仕組みとして機能したいたのです。
3.お祭りの参加体験
「踊る阿呆に、観る阿呆、同じ阿呆なら、踊らにゃ損損。」とは、阿波踊りの掛け声ですが、
盆踊りの輪の中に入り、みんなで踊る事や神輿を担ぐ一員に加わる事は、私心を脱ぎ去り一つの事に尽くす達成感をもたらしてくれます。
お祭りを見に行くだけならイベントと変わりませんが、一歩進んで参画する関係になった時には、日常のヒエラルキーや役割と関係なく一体感を味わう機会になります。
近年ハロウィンが急速に盛り上がり、クリスマスに次ぐ年間行事に成長しています。
ハロウィンの魅力は何と言っても「仮装」出来る事で、一種の変身と言えます。
東京渋谷や大阪道頓堀は仮装した若者たちで溢れ、街丸ごと仮装パーティ状態です。
普段の自分ではない非日常感を楽しみ、SNS 受けも含めて仲間と一緒に騒げるところが、好評な要因のようですが、これも「お祭りの参加体験」と言えるのではないでしょうか。
ふだん真面目で勤勉なイメージの日本人は、お祭りの「ハレ」を華やかに執り行うことによって、日常の「ケ」をリセットしているのかもしれません。
お祭りでは、大勢の人が集い、笑顔になり、いつもの街並みが全く違う景色に見え、新しい縁が生まれます。
お祭りは「日常の中に非日常を持ち込むガス抜き効果」によって、地域のあらゆるコミュニティを、「横串で刺せる唯一のコンテンツ」になるのです。
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