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そしてファン・タウンは次のステージへ:ファン・タウン ⑩ ファン・タウンの未来

街づくりのゴールとしてのファン・タウンづくりの最終回は、ファン・タウンになった後には、どんな展開が考えられるのか?について考察しました。


【内容】

  1. ファンから「ソシオ」へ

  2. 経営資源としての街づくり

  3. ファン・キャピタルという価値




1.ファンから「ソシオ」へ

ソシオとは、FCバルセロナなどの「ソシオ」が有名ですが、ファンから一歩進めた株主的な参画者を意味します。

ここではソシオを単なるユーザー(消費者)としてだけではなく、「共創プレイヤーの立場でもコミットする:ファンの進化形」と定義します。

大手食品メーカー「カゴメ」は、株主10万人構想を掲げ、2013年には個人株主が約17万人、総株主のうち99.5%(約6割の株式割合)に及んでいます。

個人株主は長期保有する傾向にある上、月額購入単価が、一般顧客100円に対し、1300円に上っています。

まさしく「ソシオ」として、カゴメを支える存在になっています。

街にも、街の魅力を支え、共創していく役割を担ってくれるソシオが必要ではないでしょうか。

単に消費者としてわざわざ都心に「買い物に行く」のであれば、せいぜい月に2〜3度の外出頻度でしょうが、ソシオとして「新しいライフスタイルの共創に参画する」という口実があれば週に2〜3度外出して定期的に通っても可笑しくありません。

ソシオは、高頻度、高単価のヘビーユーザーであり、街の応援団であり、街の研究員&口コミ・インフルエンサーという「次世代の町衆」的な存在と言えます。



2.経営資源としての街づくり

近年 ESG投資が急速に拡大し、2025年には世界全体の運用資産140兆ドルの1/3を占めると予想されています。

また企業活動の様々な場面でSDGsへの対応が指摘され、意識されるようになりました。

さらに健康経営という言葉も定着しつつあります。

いずれの動向にも共通するのは業績や設備投資などの「事業的価値」だけでなく、幅広いステイクホルダーを対象にした「社会的価値」への評価の高まりです。

健康経営がもたらす生産性向上や欠勤・離職率の低下などは内面的な持続性につながり、SDGsの推進に伴う広義の市場環境整備などは、外面的な持続性の必要条件と言えるのではないでしょうか。

企業価値において事業的価値に準じる形で、持続成長性につながる社会的価値が評価される時代になったと言えます。

一方で、いつでもどこでも働ける時代には、ハイブリッド通勤を前提に「わざわざ出社する価値のある」企業オフィスが求められます。

そして郊外住宅地にはない「多様で濃密な刺激」をリアル体験できることが、都市の価値になるのではないでしょうか。

利便性・規模性だけでない街の文化的な魅力が求められているのです

これらの動向を重ね合わせると

「どんな街にオフィス(店舗)を構え、どんな活動をしていくのか?が社員からも社会からも評価される時代」

と言えます。

街は企業にとって、重要なカルチャー発信の舞台であり、一種の「経営資源」だと考えるべきです。



3.ファン・キャピタル

社会学にソーシャルキャピタルという概念があります。

ソーシャルキャピタルとは「人と人の繋がりが地域の資産になる」という考え方で、ネットワーク(人脈)・互酬規範(助け合い)・信頼の三要素から構成されます。人々の協力関係の促進が、社会を円滑に機能させるというモノです。

その効用として、安心・安全領域では犯罪率の低下や落書きなどの防止、さらには防災や災害復興への効果が想定されます。

経済・ビジネス領域では信頼関係に基づく取引コストの低減や、起業・新規開業の促進に伴う失業率の低下が考えられます。

そして健康・福祉領域では人付き合いや健康増進活動の促進による健康長寿化や出生率の向上が期待されます。


この考え方をベースにすると、「ファンキャピタル」という概念が、生まれそうです。

ソーシャルキャピタルが「地縁」を起点にして、主に社会コストを抑制する効果が、期待されているのに対して、ファンキャピタルは「知縁」を元にして、社会コストの抑制だけでなく、来街者数、購買単価、共創・広報メリットなど、様々な利益も期待できます。

ファンキャピタルを生み出す、ファン・タウン事業は、個人、企業、社会の活動に大きなインパクトをもたらす「プラットフォーム創り」だと言えます。


「ファンタウンの創造」こそ、成熟ニッポンにふさわしい、次世代の都市戦略ではないでしょうか。


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