【内容】
サードプレイスの現在地
会社の延長としての「街の居場所」
これからが、本当に必要になる
1.サードプレイスの現在地
スターバックスコーヒーが、「サードプレイスの提供」をコンセプトに、日本に上陸したのは、1996年でした。
ミラノのエスプレッソ・バーにおける「普段着の交流」をヒントにした「サードプレイス」と言うコンセプトは、「自宅でも、会社でもない、第三の居場所の提供」を意味しています。全国に1800店弱(2023年)と広がったスターバックスの店舗網とともに、日本でも「サードプレイス」と言う言葉が、認知されてきたようです。
言葉としては認知されましたが、実際の普及には程遠いようです。
東京都が都内在住20代の男女を対象に行ったアンケートによると、
日本人にとって「居心地の良い場所」は、
・自分の部屋82%、
・居酒屋(パブ)20%、
・カラオケボックス14%、
・カフェ12%
という結果です。
大部分の人が「自分の部屋」と答えており、「第三の居場所としてのサードプレイス」と呼べる場所を持っていないことが分かります。
2.会社の延長としての「街の居場所」
イタリアやフランスのカフェ、イギリスのパブなどが発達した西欧では、各々が「行きつけのサードプレイス」を持っており、「サードプレイスがない人生」は、「寂しい人生だ」と言われるほど、日常生活に密着しています。
堅苦しい肩書きを外して、様々な人と交流し、独自のコミュニティが生まれる場所が、サードプレイス本来の姿といえます。
ところが日本の場合、先のアンケートで2位3位に挙げられている「居酒屋」や「カラオケボックス」は、会社の飲み会で利用され、息抜きの場の役割を果たしている、「会社の延長」ではないでしょうか。
そこには「会社」が移動してきただけで、独自のコミュニティがある訳ではありません。
会社と自宅との往復こそが、「勤勉の証」と考えられていた日本では、街は通勤途中に通過するだけの場所で、憩いと交流の場として楽しむ「サードプレイス」が少なかったのです。
3.これからが、本当に必要になる
日本の場合は、会社の延長としての「息抜きの場」しかありませんでした。
それが定年退職とともに、通勤が無くなり、その延長として、立ち寄れる居酒屋なども無くなります。日常的に出かける場所が無く、自宅に引きこもってしまうことになるのです。
(因みに、定年後に限らず、コロナ禍で定着したリモートワークで、出社しなくなると、飲み会の機会が激減し、社用中心だった居酒屋業態は、苦境に喘いでいます。)
人生100年時代というライフステージで考えると、退職者(やリモートワーカー)が激増するこれからの時代が、サードプレイスの真価が問われる時代なのです。
会社とは独立したサードプレイスがないと、家人からは「濡れ落ち葉」と煙たがれ、孤立・健康阻害の要因になる可能性が高まります。
2025年には65歳以上人口が、3657万人と推定され、全体の3割を超える様になります。
会社の延長ではなく、引っ込み思案の日本人高齢者のための「居場所」になる、日本型のサードプレイスが必要ではないでしょうか。
このような認識をもとに、今シリーズでは、日本型サードプレイスを考察します。
よろしくお願いします。
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