コロナ禍を経てオンライン1stが浸透し、どこにでも住め、どこででも働ける時代になりました。必然的にわざわざ移動して集まる価値と理由が問われます。リアルな都市の価値が問われているのです。技術革新が進む中で収益の2割以上を新規事業が占める企業が増え、オフィスは単に集まって事務作業する場ではなく、出会い・交流し・イノベーションを生み出す場としての役割が求められるようになっています。都市産業論でこれまでも標榜されてきた「クリエイティブ・シティ」を具体化する方策が不可欠になっているのです。
このような認識を元にすると、都市における重要な舞台は、ビル内で閉じられたオフィスの中ではなく、建物低層部と道路とが接する沿道ゾーン:【街ぎわプレイス】になると考えます。オフィス内の様々な活動がそこだけで完結してしまっては、街に染み出し発信・伝搬せず、他所から街を介して新しい情報・刺激との化学反応によって、変化・進化する可能性も低くなります。都市におけるイノベーションにはオフィス内外の相互作用・連鎖反応が不可欠なのです。街ぎわプレイスは様々な人の活動接点となる場所で、米国ポートランドの都市局では「地上30ft(約10m)以下の世界観が非常に重要」をコメントされています。そして丸の内などの都心部の再開発で重視される「イノベーショナルな(技術革新が起こりやすい)環境づくり」の必須要件が、「街ぎわプレイスにおけるパーソナルな表現と交流」であることが共通認識になっています。そのゴールとしてイメージされるのは「街丸ごとフェス化」なのですが、この実現がことのほか難しいのです。音楽祭をしてもアーティスト・イン・レジデンスを試みても、イベントとして話題にはなっても周囲のビジネスマンの行動変容には至っていません。食や音楽をはじめマンガ・アニメ・ゲームなどの様々なカルチャーに対して、企業人としてではなくパーソナルな嗜好、特技、価値観などが遺憾無く表現・発揮され、お互いをリスペクトしながら交流し化学反応を起こせるような街ぎわプレイスが理想的です。とにかく高層化して広いオフィス床の確保に注力してきた従来型の都市開発に対して、街ぎわプレイスをいかに作り込めるかに価値シフトしているのです。街ぎわプレイスにおけるパーソナルな表現と交流を具体化するための課題と方策を検討していきたいと思います。
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