街ぎわプレイスにおける表現・交流を促す OS方策の三番目は「街をデコる」です。
「人間は本来さまざまなノイズを抱えた存在なので、私たちが暮らす環境もノイズ感を伴った方が心地良いのです」と建築家の隈研吾氏はノイズ感の必要性を説いています。同氏の小さな素材を組み合わせた建築デザインに、他には無い居心地の良さを感じるのは私だけではないと思います。
昔の日本の建物と街は、木と土壁と紙を主材料として、柔らかくて温かみがあり、ヒューマンスケールで、節分や七夕など季節ごとに細やかな飾り付けの余地があり、さまざまな工夫で催事の設えが施されていました。
翻って現代都市は、コンクリートとガラスで硬くて冷たい表情になってしまいました。しかも巨大化した都市は、大型プロジェクターや電飾で彩られ、個人の力で工夫した飾り付けを寄せ付けません。非人間的で無力感さえ漂います。
都市には建築の巨大さ、無味乾燥さを和らげる工夫が必要ではないでしょうか。少なくとも「街路目線」のエリアでは「デコる」余地が必要だと考えます。
街をデコる事例として、まず思い浮かべる事例が「アンブレラ・スカイ」です。アゲタ市(ポルトガル)で2012年から始まった芸術祭のプロジェクトで、初夏の空を見上げると、青空を埋め尽くすカラフルな傘たちが連なり、暑い夏にもウキウキした気分で散歩が楽しめそうです。
日本でも六本木の東京ミッドタウンでは、端午の節句に様々なデザイン鯉のぼりが広い屋外空間を埋め尽くして壮観です。またクリスマス装飾は定着しています。毎年11月初めから年末にかけて、各地でクリスマスツリーやイルミネーションが飾り付けられ、街が最も美しく見える時期かもしれません。
ただ最近ではクリスマス装飾も、数十mというツリーの大きさを競い、イルミネーションの数を競うようになってしまいました。ドイツのクリスマス・マーケットのように、単に観る以外に楽しめる工夫が望まれます。
アサダノボルさんが提案する「住み開き」や磯井純充さんが提唱する「まちライブラリー」も一種の「デコり」だと考えます。自宅の一部を趣味のミュージアムやギャラリーとして解放したり、お店の一部をライブラリー化する事は、街との関わりづくりと個人の解放には有効です。特に「まちライブラリー」は参加者が読んでほしい本を持ち寄ってライブラリー化する仕組みで、自分の表現ツールとしての書籍活用は、アートよりもハードルが低く、幅広い人たちの参画が期待できます。
管理の工夫をした上でオフィスロビーなどが活用できると、非常に有効だと考えます。「贈与という行為は不思議で、貰った方の喜びはすぐに忘れてしまいますが、与えた方の悦びはズッと残るもの(小山薫堂さん)」だと言われます。
消費者の立場だけでなく、街に「私物を挿入」する事で、街を自分ごと化する事が可能になります。街はどんどんカスタマイズされて行くべきだと考えます。
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