【内容】
1.コミュニティから「ソシオ」へ
2.ソシオ・キャピタル
3.バーチャル・ソシオ
1.コミュニティから「ソシオ」へ
ソシオとは、FCバルセロナなどの「ソシオ」が有名ですが、ファンから一歩進めた株主的な参画者を意味します。
ここではソシオを単なるユーザー(消費者)としてだけではなく、「共創プレイヤーの立場でもコミットする:ファンの進化形」と定義します。
大手食品メーカー「カゴメ」は、株主10万人構想を掲げ、2013年には個人株主が約17万人、総株主のうち99.5%(約6割の株式割合)に及んでいます。
個人株主は長期保有する傾向にある上、月額購入単価が、一般顧客100円に対し、1300円に上っています。
まさしく「ソシオ」として、カゴメを支える存在になっています。
街にも、街の魅力を支え、共創していく役割を担ってくれるソシオが必要ではないでしょうか。
単に消費者としてわざわざ都心に「買い物に行く」のであれば、せいぜい月に2〜3度の外出頻度でしょうが、ソシオとして「新しいライフスタイルの共創に参画する」という口実があれば週に2〜3度外出して定期的に通っても可笑しくありません。
ソシオは、高頻度、高単価のヘビーユーザーであり、街の応援団であり、街の研究員&口コミ・インフルエンサーという「次世代の町衆」的な存在と言えます。
2.ソシオ・キャピタル
社会学にソーシャルキャピタルという概念があります。
ソーシャルキャピタルとは「人と人の繋がりが地域の資産になる」という考え方で、ネットワーク(人脈)・互酬規範(助け合い)・信頼の三要素から構成されます。人々の協力関係の促進が、社会を円滑に機能させるというモノです。
その効用として、安心・安全領域では犯罪率の低下や落書きなどの防止、さらには防災や災害復興への効果が想定されます。
経済・ビジネス領域では信頼関係に基づく取引コストの低減や、起業・新規開業の促進に伴う失業率の低下が考えられます。
そして健康・福祉領域では人付き合いや健康増進活動の促進による健康長寿化や出生率の向上が期待されます。
この考え方をベースにすると、「ソシオ・キャピタル」という概念が、生まれそうです。
ソーシャルキャピタルが「地縁」を起点にして、主に社会コストを抑制する効果が、期待されているのに対して、ソシオ・キャピタルは「知縁」を元にして、社会コストの抑制だけでなく、来街者数、購買単価、共創・広報メリットなど、様々な利益も期待できます。
ソシオ・キャピタルは、次世代の街づくりのゴールと言えます。
「ソシオ・キャピタルの創造」こそ、成熟ニッポンにふさわしい、次世代の都市戦略ではないでしょうか。
3.バーチャル・ソシオ
さらにシェア・ビレッジの例(年会費3000円、会員数2000人)のように、「バーチャル・ソシオ(住民)」を想定するとオンライン1stの時代に対応した収益モデルを検討できそうです。
日本の人口構成や経済成長力を勘案すれば、「バーチャル・ソシオ」は非常に有効な施策だと考えます。
都市における共感人口の延長には、リアルな都市圏や国籍を超えた「バーチャル住民」が想定され、都市版のふるさと納税的の貢献もイメージ可能です。
ふるさと納税は返礼産品が話題になりますが、本来は「自分で応援したい地方を選ぶ」ことが主題でした。
130万人の国民に対し、7万人(2020年)を超える外国人が登録している東欧のエストニアの電子政府のように、リアルな都市圏や国籍を超えたデジタルな渋谷住民やアキバ住民などがイメージ可能です。
共感人口を重視して、その活動舞台として独自の都市カルチャーを発信して行く事による価値創造は非常に有効です。
国際的にも評価され、ファンの多い日本のカルチャーを基盤にして都市の再生を目指すことは、必然であり希望のある戦略と考えます。
またソシオ・キャピタルを基にしたビジネスモデルでは、コンテンツが充実してくればオンライン上でチャンネル登録数に応じた広告料収入や、リアルではイベント時の入場料収入、さらには商品開発収入なども上乗せが可能になり、多彩な収益構造が作り上げられます。
都市開発・運営するディベロッパーは単なる床貸し事業ではなく、リアルとオンライン、お客と商品開発者(ソシオ)とが、ハイブリッドに共創・展開する舞台を創出する【ソシオ・プラットフォーム事業】に転換することになるのです。
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