都市開発関係の仕事に就いて30年余りになりますが、以前から疑問に思っていたことがあります。それは「どうして何度も何度も手戻りが起こるのか?」と言うことです。
基本構想のステップで、主な用途や構成を一通り検討します。それが敷地や法的条件を踏まえた基本計画、構造や設備の概略計画を含む基本設計、そして施工方法や費用を反映した実施設計というようにステップを踏んで進んでいくのですが、特に基本計画段階では、担当者が変わるたびに、何度も計画し直すことが少なくありません。前提条件が認識共有されていないのか?あるいは引き継ぎや情報伝達がうまくいかないのか?非常に無駄が多いプロセスだと実感していました。
ハード前提で建築図面による可視化を中心にして議論を進めるから、この無駄が生じるのではないでしょうか? 映画制作のように、企画・アイディア段階、シナリオ段階、絵コンテ段階、撮影段階というステップで推進できないでしょうか?
都市開発の基本計画段階は、映画制作で言うと絵コンテ段階に相当すると想定しますが、「取り敢えずボリュームスタディして欲しい」というオーダーは、「いきなり絵コンテを作ってみてください」に近い指示かも知れません。事業主体の意図がわからない中で、「絵コンテ」は、アーでも無い、コーでも無いと何度も書き直されるのです。時間とお金の無駄です。絵コンテの元になるアイディアやシナリオが必要なのです。
これがコンセプトを再考すべきだと実感した背景です。
建築図面に至る前に事業主体側で、どんなユーザー・アクティビティを想定し、どのような施設・サービスを配置したいのか?を提示する必要があり、一連のアウトプットがコンセプト・プランニングなのです。思いつきやキャッチフレーズでは無いですし、ましてや「お題目」ではありません。コンセプトづくりは、計画与件をアウトプットするための、プロフェッショナルなプランニング業務であると考えます。
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