【内容】
竹芝プロジェクトに見るエリマネと産業協議会の補完相乗
文化施設コンセッションの3ステップ
1.竹芝プロジェクトに見るエリマネ&産業協議会の補完相乗
東京ポートシティ竹芝(以下「竹芝」)は、東京都の産業貿易センターの建て替えを機にした複合都市開発で、東急不動産と鹿島建設とで推進されました。
「竹芝」プロジェクトでは、浜松町駅から500m離れた孤立した立地でありながら「コンテンツ産業のメッカづくり」を目指す事が求められました。
その実現に向けて「竹芝」プロジェクトでは、ビルの開業前からエリマネ活動と CiPという協議会活動が行われました。
エリマネ活動では、芝離宮庭園を含めた竹芝エリアのコミュニティの育成、賑わいづくりと知名度向上が図られました。
そしてCiP協議会では、理事長の中村伊知哉氏を中心に、約40社が協議と検討を重ねて「デジタル特区スーパーシティ構想」などが策定され、社会実験などが開催されました。
これらの活動実績が評価され、東京都が推進する「Smart TOKYO」 の先行実施エリアに採択されたり、「国交省スマートシティ・モデルプロジェクト」に認定され、開業時には「ソフトバンクグループ」本社の入居につながりました。
「竹芝」には文化施設はありませんが、エリマネと産業協議会との連携による「産業メッカづくり」の事例として非常に参考になると思います。」
2.文化施設コンセッションの3ステップ
私たちは文化施設のコンセッションには、下記のように3ステップあると考えます。
第1ステップ:マッチング段階
自治体が文化施設のコンセッション事業を実施すると公表しただけでは、よほどの大都市でなければ、興味を示す事業者は少ないのではないでしょうか?
運営だけなのか?建設まで含めた事業なのか?によっても負担できる事業者の規模も異なりますし、運営ノウハウや事業負担が可能な事業者は、都市部に集中しているのです。
「どのような対象者に対して、どう訴求するのか?」という民間企業であれば基本となる「マーケティング感覚」が不足しています。
また単に施設概要と現状の利用状況とを提示するだけはなく、「どのようなゴールを目指して、どのようなリソースを提供できるのか?」という「セールスシート」の体裁を整えることが不可欠だと考えます。
民間事業者も、文化施設の運営ノウハウや地域の市場環境に精通しているわけではないですから、「わからないから民間に丸投げ」してしまうはなく、「このような仕組みで、こう取り組めば事業化できるのではないか」という「ベストプラクティスの例示」も有効です。
第2ステップ:文化施設のサードプレイス化
孤立立地で特定目的施設となっている文化施設のコンセッションを成功させるためには、如何に「日常的な利用性」を高められるかを検討する必要があります。
文化施設の内外での「利用規制を緩和」する事で、複合的な利用を促すとともに、自主事業を充実させ、それを多様な体験機会として提供し、一連の活動を企業価値に連携させる事が重要です。
その為には従来の施設運営会社だけではなく、様々なコンテンツ事業者を巻き込める枠組みが必要になってきます。
また「ホールでのライブ体験を、ミュージアム的な常設体験に変換し、ミュージアムの鑑賞体験を、ライブのような感動体験に拡張する」ために、VRやイマーシブ、デジタルツインなどの先進技術による体験提供も非常に有効だと考えます。
第3ステップ:文化都心マネジメント
さらに幅広い事業者を巻き込む為には、文化施設単体ではなく、周辺エリアを含めたtoB視点でのエリマネ活動を通じて「プレイス・キャピタル」を向上させ、産業振興の素地を作っていく「文化都心マネジメント」が必要になってきます。
それは単に文化施設を活性化させるだけではなく、「〇〇産業のメッカ」づくりという産業振興に結びつきます。
さらにその延長には、閉塞感が漂う日常社会に風穴をあけ、地域の個性や誇りをストーリーとして甦らせ、事業者を含めた多様な共感者をうみ、スタートアップの育成を通じて、地域の未来をみんなで描いて行く未来に繋がると考えます。
この3ステップを展開していくことが、シン文化施設コンセッションであり、このようにして構築される街こそ、真の国際文化都市と言えるのではないでしょうか。
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