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シン血縁インフラとなる「ワンダー【時感】ミュージアムとしてのお寺:社寺再考 ⑧

執筆者の写真: adminadmin

神社で「シン地縁」がテーマになるのに対して、人間の「死」を扱うお寺は「シン血縁」がテーマになると考えます。

【内容】

  1. 「終活」というトレンド

  2. ファミリーヒストリーの効用

  3. カジュアルに死と向き合う




1.「終活」というトレンド

日本では、「死」と言うものに触れる事、考える事自体がタブー視されてきましたが、超高齢社会になり、「終活」が一般化しつつあります。

終活とは「人生の最後に向けて行う活動・事前準備」と定義され、

  1. 今後の介護や医療についての意向、

  2. 亡くなった時の葬儀やお墓に関する事、

  3. 遺産相続、物品整理などを整理する事

で、残された家族や周囲に苦労をかけないと共に、自分が歩んできた人生を振り返り、気持ちの整理をすることで、今後の人生をより充実させる効果があると言われます。


2. ファミリーヒストリーの効用

NHK総合テレビジョンのドキュメンタリー番組「ファミリーヒストリー」は、各界で活躍する人々の父母や先祖が、いかに生き抜いてきたか?を日本国内外や関連人物に取材し、構成する内容です。

番組出演者は、それぞれ自分の思い出の範囲を超えた、家族の生き様とストーリーを目にして、「血のつながり」を実感して涙することが多いのです。核家族化やシングル生活が主流になる現代都市のライフスタイルにおいて、「血のつながり」を意識することは、極めて重要ではないでしょうか。

以前、「ペット」と「子供」との違いを議論したことがあります。ペットも子供も、生後の成長を楽しみ、世話が焼ける事さえ、喜びになり、亡くなった時には喪失感に襲われます。ただ一点「自分の血をわけることの有無」が異なるのです。従って「子育ては、溺愛するだけでなく、自立して生きていける力と伝えるべき価値観が必要」という結論になりました。

自分の生きる時間を、祖先から子孫への流れの中で考える時、日常とは異なる「意味」が見えてくるのではないでしょうか?


3.カジュアルに「死」と向き合う

今春、二子玉川で開催された「END展」は、若者を中心に評判となった展覧会です。

「END=死」を題材にしながら、「死は貴方のそばにいると思いますか?」「生まれ変わりたいですか?」などのシリアスな問いと、「天才バカボン」などのマンガの名場面と重ね合わせることで、カジュアルで有りながら、表層的ではない思考を導き出していたのです。

また田村淳さんが、手がける事業「ITAKOTO:カジュアルな遺言動画サービス」も極めて興味深いサービスです。自分が「居たこと」と青森・恐山のイタコとを掛け合わせたネーミングで、「この世から心残りを無くしたい」と言う思いで、作られたそうです。生前から遺言を準備し、定期的にアップデートできるようにする事で、家族や周囲の人達にも、「緩い覚悟」を醸し出し、継承に関わる苦労を軽減するとともに、自らの生の充実にも繋がるサービスだと思います。


このように、社会に少しずつ「死」と向き合う姿勢が定着してきました。さらに「血のつながり」や、先祖・子孫に想いを巡らせる機会は、近視眼的になりがちな都市生活において、極めて重要だと考えます。

シン血縁インフラとなる「ワンダー【時感】ミュージアム」としてのお寺の役割が見えてくるのではないでしょうか。

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