【内容】
これまでの論点整理
シン駅3.0の着目点
3つの方策
1.これまでの論点整理
次世代の駅(シン駅3,0)の基本方針を検討するため、これまでの論点を整理します。
コロナ禍によって、ライフスタイルが大きく変わり、人口減少や人手不足など、鉄道会社の経営課題が10年分も前倒しされた。
「阪急型」のビジネスモデルが崩壊し、様々なサブスクサービスによる売上アップと、発券・改札の無人化などによるコストダウンに加えて、「企画業務導入」を図っているが、新たな事業モデルはなかなか見つからない。
街はずれの「停車場」から、集客力を生かしたターミナル化、さらに沿線コングロマリット化してきた鉄道会社だが、コロナ禍を経て、その源泉である「駅の集客力」に限りが見えている。
「プチ目的地」としての駅環境、駅の「半・公共性」、次世代業務の「プラットフォーム」の必要性などが課題
シン駅3.0の着目点
新しい駅ビジネスを検討するにあたっての、着目点を整理します。
リアルな顧客接点としての駅:ネットショッピングの普及で、オンライン上で開発・製造・販売を完結させるD2Cメーカーの台頭が顕著です。
数十万社に及ぶD2 C メーカーがオンライン上にひしめき合っています。
Web広告料は高騰し、結局は体力があり情報発信し続けることができる、大手メーカーが勝つ構図に収まりつつあります。
結局「最もコストパフォーマンスの高い顧客接点は商業施設への出店だった」というパルコ役員のコメント出るように、リアルな顧客接点の有効性が高まっています。
一方「駅」に目を移すと、世界の乗降客の多い駅ランキングでは、上位10駅のうち8駅が日本の駅になっています。
特に新宿駅の1日の乗降客は世界一の350万人(乗客175万人相当は、年間6.5億人換算)にのぼり、年間集客数では、伊勢丹新宿店3000万人 六本木ヒルズ5000万人などを遥かに圧倒しています。
因みに日本マーケティング研究所の2014年調査によると、 JR東日本全体での顧客接点数は1日あたり1500万人を超え、セブンイレブン全店での顧客接点数に匹敵します。
利用者が減少したとはいえ、日本の鉄道駅は圧倒的な「リアル顧客接点」と言えます。
従来は狭い駅構内から如何に安全・円滑に、「お客さまを誘導するのか?」の視点しかありませんでしたが、技術の進展によって人流のコントロールが可能になりつつあります。
緩急の人流動線を使い分け、駅を「リアルな顧客接点」として活用する可能性を感じます。
2.「半・公共人」としての駅係員:駅係員には、独特の信頼があるのではないでしょうか?
「駅のことなら(時にはその他のことまで)何でも相談に乗ってくれる」
「役人ではないけれど、中立性のある(半分)公的な立場の人間」
「駅や街の事、情報に詳しい人」
露骨な商売っ気や強引なセールスが、敬遠される傾向にある環境にあって、駅係員の「半・公共人」としての特性・信頼は、貴重ではないでしょうか。従来の、出来るだけ円滑に誘導する係員から、「気持ちよく滞留と交流を促す」コミュニティ・マネジャーとしての役割が期待されます。
3.3つの方策
上記の論点や着目点を踏まえて、3つの方策を提示します。
方策1「共創・競創スペースとしての駅」:リアルの顧客接点としての駅の可能性を提案します。
方策2「企業接点スペースとしての駅」:企業の人材獲得につながる、日常的な企業接点スペースを提案します。
方策3「コミュニティ・ラボとしての駅」:会社人間だった人たちの、地域活動の基点となる場を提案します。
次回以降で、各方策についての詳細を検討します。
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