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ニッポン・シアター⑤ 日本独自の観劇スタイル

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 2022年3月10日
  • 読了時間: 2分

相撲や歌舞伎に代表されるように、客席で飲んだり食べたりしながらの観劇は日本独特のスタイルです。また海外では上演中は静かに見る事が原則ですから、歌舞伎の大向こうのように「成田屋―!」「よっ音羽や!」などの掛け声はご法度になります。日本における伝統芸能の興行方式では、大御所と新人とが同じ場所に名を連ねる仕組みが多いと思います。出演時間や設えなどの格差はありますが、大抵は3~4時間と長時間の興行の中に前座や端役として、組み込み盛り込まれています。この長い公演時間の中で、日本人独特の「ながら交流」が生まれます。日本人は対面での交流よりも、農耕民族ならではの、畑作業をしながら、道具の手入れをしながら、共同作業をしながら語らい交流していくスタイルを好むといわれます。現代でもその特性は、映像を見ながら打ち込むニコニコ動画などの弾幕文化に引き継がれているのです。

寄席であれば昼・夜それぞれ4時間程度の公演時間に、落語や漫才、コントを交えながら15〜16組が出演します。そのうち落語では前座・二つ目・真打の三段階が存在し、真打がトリを務める構成になっています。相撲は幕内・十両・幕下・三枚目・序二段・序ノ口の6階級があり、さらに幕内には横綱・大関・関脇・小結・前頭の5つの格付けに分けられます。

歌舞伎の場合も昼の部・夜の部に別れ、平均4時間の公演時間の中で、市川海老蔵や中村勘九郎などが主役を務めるトリの演目の前に、多彩な役者が出演する短い演目が並びます。

いずれもお弁当などの食事や休憩の時間を交えながら、半日から丸一日楽しめるような構成になっています。忙しい現代社会の生活リズムの中では、長時間の公演はズレているかも知れませんが、歌舞伎の一幕見席のようにクイック鑑賞できる仕組みも用意されています。

「祭り」を起源にもつ日本の伝統芸能の特性は、行楽的寛容な空気感にあり、世知辛い現代における貴重な価値観ではないでしょうか。これを基盤に現代の忙しいライフスタイルやインバウンド対応のナイトタイムエコノミーの要素などを盛り込んでいくことが有効だと考えます。

 
 
 

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