日本伝統の半日制の公演システムでは、時間にゆとりのある客達は大御所によるトリの演目の前座を務める、若い演者も見る仕組みになっています。その中で才能ある若手を見つけ、将来の成長を見越して贔屓にしていくことも楽しみの一つになっているのではないでしょうか。「祭り」を起源にもつ日本の伝統芸能は、行楽的寛容な空気の中に次世代育成の要素が組み入れられた優れた仕組みであると考えます。
これと対極にあるのが、オンライン公演です。コロナ禍で急速に普及したオンライン公演ですが、一言で言えば「弱肉強食」の世界になってしまっています。オンライン公演が残酷なのは、どんなライブも同じ画面で見てしまう事です。リアルライブであれば100人のライブハウスの演出と、東京ドーム公演の演出とを比べる人はいません。しかしオンライン公演では予算の大小に関係なく、スマホやパソコンの画面を通してフラットに並べられて残酷に比べられてしまう事になります。しかもリアルなライブでは仲間内で楽しむレジャー的な要素も強いのですが、オンライン公演では個人がスマホやパソコンで「純粋に」鑑賞する事が主流になります。そんな状況のオンライン公演での体験価値を比較すれば、一部の実績のあるアーティストは人も金も集められますが、まだまだ発展途上の若手アーティストには極めて厳しい状況と評価が与えられる事になるのではないでしょうか。実際オンライン公演で集客できるのは、「既に有名な」アーティストに限られています。オンライン上でのコンテンツは、基本的に好きなものしか見ません。自分が既に好きなアーティストを検索して鑑賞し、終われば他のコンテンツに切り替えるのです。
この「紋切り型」の仕組みを補完するシステムとして、ニッポン・シアターを拠点にして、多分野の若手アーティストの成長も含めてハイブリッド公演として配信するのです。寄席感覚・フェス感覚の行楽的寛容性の中で、多彩な組み合わせやコラボを交えた演出をして行くことが、次世代育成につながります。共の育つ、共に創る、インクルーシブな公演環境こそ、ニッポン・シアターが提示すべき価値観だと考えます。
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