オンライン1stを前提にコンテンツプレイスを検討するための前提や背景がいくつかあります。まず日本の業種別EC化率(BtoC)を見てみると、書籍・音楽(43%)、家電(37%)や生活雑貨・家具(26%)など高い分野もありますが、「食品は3%強」に止まっています。従来から指摘されるように「食品」は消費期限や配送コストの問題からEC化しにくい分野と推察され、全体EC化率が20%を超える米国や中国でも「食品」は3%程度に止まっています。ファッション(19%)やコスメ(6%)などの分野は今後ますます ECにシフトすると予想される中、リアル商業は「飲食店と合わせて食+α」を集客核として構成すべきだと考えます。一方でショールーミングが常態化している生活家電・AV機器や、 D2 Cメーカーの台頭が著しい衣料品・身の回り品の分野では、本格的なオンライン連携を対応していく必要があります。また生活者の視点で見るとネット通販は便利な反面、情報が平坦で選択肢が多すぎ「ネットでの選択疲れ」も顕在化し始めています。そして何より「ずっと家に篭りきりというのも息が詰まる」ため、「外出する口実」を求めているも現実なようです。
これらの認識を基に①食のコンテンツ化②D2Cコンテンツモール③セレクト量販店④ソシオコミュニティ⑤ワーク&ライフMIX などを提案します。
またコンテンツプレイスは、リアルにおける集客・量を求めるのでなく、オンライン1stで共有情報の「質」を高め、ネット上でファンを育み価値化する戦略です。交通利便性や高い容積率を追求するだけでなく「世界観とストーリー価値」が重視されるようになります。事例としては10階建ての近代的なビルから、自然素材をふんだんに使用した4階建ての社屋に建て替えられた赤坂離宮前の「虎屋本店」や、飯田橋から所沢に本社を移転し、本棚劇場などの文化施設を含む「ところざわサクラタウン」を開発したKADOKAWAがベンチマークとなります。それぞれ自社のDNAを踏まえ、将来に向けたサスティナビリティを考えた上で、強みに磨きをかける選択だといえます。東京大学の小泉先生が指摘される「これからは真実性(相応しさ)と歴史性(サスティナビリティ)とが重視されるようになる」の好例で、「世界観とストーリー」を纏ったリアル環境をショールームのように生かしてオンライン上でファン(=経済価値)を獲得していくわけです。コンテンツプレイスの設えとして、「神社」が持つ①由来②境内・参道③祭りの三点セットの見立てが参考になると考えます。
由来:立地(自然、歴史など)或いは事業者の DNAを踏まえた「想いとストーリー」
境内・参道:ファンが共感体験を味わえる「配置と設え」
祭り:今ここに来るべき機会やファンの拡張機会などの「定期プログラム」
リアル環境における「聖地化」を念頭に以降で5つのコンテンツプレイス事業を検討します。
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