コロナショック以前から減衰傾向にあった都心商業施設の売り上げは、外出自粛や営業時間制限、そして何よりもテレワークの浸透に伴う通勤客の減少によって、大打撃を受けてました。ネット通販に代替され「売れなく」なり、在宅勤務に伴いわざわざ「来店しなく」なってしまったという状況です。通勤のついでに立ち寄って購入していたお客様が、わざわざ外出する必要を感じなくなった訳で、買い物目的で人を集めることが難しい時代になったと言えます。元々「都市」という言葉は「都」=capital: 統合と再配分の象徴と「市」=market: 主体同士の交換の象徴によって表され、二つのシステムを通じて「自給自足ではなく、ともに生きてゆく」人間の生存戦略のための装置であると、野原卓氏(横国大教授)は指摘されています。最も都市的な機能として賑わいを担ってきた商業施設(=マーケットプレイス)の存在意義が問われていると言えます。
買い物行動では衝動買いが8割で、滞留客になれば客単価が4割アップするという定説があり、都心商業施設は集客・回遊施策によってその存在意義を発揮してきました。ディベロッパーにとっては[交通利便性の高さ]×[売り場の集積規模]という成功の方程式が崩壊したわけです。商業施設の[固定+売上歩合]賃料が成立せず、全国のショッピングセンターでは約18万件の空き区画があると言われます。少しでも賃料外収入を稼ごうと暫定店舗などを試みても、手間の割に効果・実感が無いようです。
この10年間家計消費は280兆円前後で停滞した状況です。少子高齢化に加え EC の台頭とコロナ禍など影響などを踏まえ、2035年には小売業の販売予測が117兆円(ニッセイ基礎研究所)になると予想されています。2016年の140兆円に比べ約6分の1(16%)の大幅減少になります。
さらに米国では NIKE が靴販売チェーン店「フットロッカー」から撤退するという報道が入っています。お客様との強いつながりを持ちデジタル活用が進んでいる企業は、自社ブランドを守りながら顧客体験の最大化に向けて、早晩自らお客様と商売するようになると考えられていました。小売業が今まで「つながり」と呼んでいたものが、如何に脆弱なものであったかを痛感します。小売業は真剣にお客様とつながる理由を作らなければいけない時代なのです。これまでの「商品で人を集める」施設から「人の繋がりで商品・メーカーを集める」施設への視点転換です。その意味で「商業施設」の再定義が必要です。抜本的な変革スタンスで生み出される次世代の賑わい拠点のコンセプトが求められるのです。
私たちはこのような認識をもとに「マーケットプレイス」から「コンテンツプレイス」へのシフトを提案します。
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