【内容】
そもそも「ミュージアム」って何なの?
日本型のミュージアム・ビジネス
ブロックバスター展の光と影
1.そもそも「ミュージアム」って何なの?
博物館とは、博物館法において「資料収集・保存」「研究・展示」「教育普及」といった活動を一体的に行う施設を指し、歴史や科学博物館だけでなく、美術館や動物園、植物園、水族館を含む定義になっています。
美術館というのは、より厳密に言えば「アート・ミュージアム(美術博物館)」、つまり美術を専門に扱う博物館なのです。
日本には全博物館(博物館、美術館、動・植物園、水族館など)は5738館(平成30年)あり、そのうち1069館が美術館という状況です。
博物館と美術館は、英語にするとどちらも「ミュージアム」なのですが、日本ではかなりハッキリと区別されています。
国立だけでなく、県立、市立ともに、博物館と美術館とが別々に存在しています。
「ミュージアム」の訳語に、「博物館」という言葉を当てた最も早い事例の一つが、福沢諭吉が刊行した「西洋事情(1866年)」だと言われます。
また第1回内国勧業博覧会(1877年)には、「美術館」と名付けられた、レンガ造の洋風建築が登場しています。
「お堅いイメージ」が強いミュージアムですが、法的な位置付けが、動物園や水毒館と同列である判ると、「肩の力」を抜いて活用方策を検討できそうです。
2.日本型のミュージアム・ビジネス
「世界で最も来場者数の多かった展覧会ランキング(2019年)」では、例年通り日本の美術展が上位(4位8931人/日:ムンク展@東京都美術館、5位7808人/日:クリムト展@東京都美術館、7位7697人/日:国宝東寺展@東京国立博物館)に含まれています。
一方「世界で最も来場者数の多かった美術館・博物館ランキング(2019年)」では、1位960万人:ルーブル美術館以下、10位の407万人:ナショナル・ギャラリー・オブ・アート(米)に至るまで、日本の美術館・博物館は、ランクインしていません。
日本人は、美術展を好んで訪れる事がわかると同時に、日本の美術展は、海外から作品を借りて展示する、企画展が中心であることから、限られた展示期間に来場者が集中するという特徴と、企画展を実施していない期間に来場者を集められていない状況を示しています。
日本の展覧会の特徴の一つに「ブロックバスター展」が、挙げられます。
3.ブロックバスター展の光と影
「ブロックバスター展」とは、国宝やムンク、クリムトなどのように、すでに評価と人気を確立した作家の名品を集め、大々的な広報を仕掛けて集客する手法です。
もともとは、戦前にデパートを会場にして、新聞社が主催してきた展覧会方式で、戦後、テレビ局の参入に伴い、規模を拡大し、美術館を舞台にした「ブロックバスター展」として定着したのです。
メディアによる多彩な話題づくりによって、普段は美術館に足を運ばないような人が、展覧会を訪れるきっかけを作り、美術の裾野を広げるというメリットがあります。
その一方で「集客・イベント」としての側面が強調されるため、一過性の消費に終わってしまうデメリットも挙げられています。
ブロックバスター展では、モネやゴッホといった確実に集客を見込める、「西洋・近代・名画一辺倒の大型展」ばかりが企画・開催されました。
それが何十年も続けられたため、下記のような副作用が発生しています。
近代名画ばかりに親しみ、現代美術に関する市民の関心・理解が進まないため、「アート市場(=国内アーティスト)」が育たない。
展覧会の多くが、「作品を借りる元」の美術館学芸員による監修となるため、日本の学芸員の専門性・自由度が発揮できず、スキルが向上しない。
次世代のミュージアム運営を検討するには、「西洋・近代・名画偏重」のブロックバスター展に頼らない、運営方策を模索する必要があると考えます。
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