【内容】
1.ジョン・ジャーディの中間領域
2.トーマス・ヘザウィックの中間領域
3.隈研吾の中間領域
遠慮しがちな公共スペースでのアクティビティを活性化させる中間領域の設えのベンチマークとなる事例をいくつか整理したいと思います。
1.ジョン・ジャーディの中間領域
米国サンディエゴのホートンプラザや、日本でも六本木ヒルズ、難波パークス、博多キャナルシティなどの設計を手掛け、「フェスティバル・マーケットプレイス」というコンセプトの環境デザインで一世を風靡しました。
建物を「街」に見立て、雑然さを人工的に再現しました。
来街者が、街全体を回遊して何度でも楽しめ、歩くたびに景色が変わるように、わざと見通しを悪くしたり、床や天井のパターンを変えたり、周遊させる場所を設けたり、緩やかにカーブする動線などがデザインされています。
六本木ヒルズで手がけた、低層部のメトロハット、カスケードのあるパーゴラ、展望台への入り口パビリオン、ヒルズアリーナなど、一般的なビルディングとは異なるスケールと機能の建築物が、賑わいと居心地の良さを演出しています。
2.トーマス・ヘザウィックの中間領域
森ビルが開発する「麻布台プロジェクト」の低層ゾーンをデザインするトーマス・へザウィックも、建築の枠に囚われない建築家で、ベンチマークになるのではないでしょうか。
「タンポポ」の愛称がついた上海万博英国館では、大英帝国が集めた世界中の「種子」を、10万本のアクリル棒に封じ込めて、パビリオンを形成しました。
エリザベス女王の在位70周年記念行事のための「Tree of Trees」や、ニューヨークのハドソンヤード開発における「ヴィッセル」などでも同様に、人々の「愛着を反映させる小さなパーツ」を開発し、無数に組み合わせていくことで、共感を醸し出していく手法を駆使しています。
3.隈研吾氏の中間領域
国立競技場を設計した隈研吾氏も、中間領域づくりに長けた建築家だと考えます。
アオーレ長岡のナカドマは、雪国において天候に左右されることのない半屋外の広場空間です。
巧みなトップライトが木漏れ日のような光を投げかけ、地場産のスギ材ルーバーが、巨大な空間でも、民家のような居心地の良さを醸し出しています。
京王高尾山口駅の木の大屋根は、日常の世界と聖地との結界であり、鉄道という近代のインフラと、大自然とのボーダーとして機能しています。
高尾山の行燈からヒントを得た照明が柔らかい光を投げかけています。
隈研吾氏は「ノイジーな存在の人間だから、ノイジーな空間を求める」と、コメントしているように、公共スペースとして開放するのであれば、ノイジーな要素をきめ細かくデザインしていくことで、利用性が高まるということをよく理解しているのだと考えます。
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