人口減少時代の都市再生 「関わり資本」よる都市再生 ①
- admin
- 6月18日
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【内容】
第1章 新潟市における都市再生の挑戦:「にいがた2km」構想とは
第2章 展望:経済・文化・市民参加による都市の再構築
第3章 人口減少時代の都市再生
第1章 新潟市における都市再生の挑戦:「にいがた2km」構想とは
「にいがた2km」プロジェクトは、新潟市の中心市街地である新潟駅、万代、万代島、古町を結ぶ約2キロメートルの都心軸を対象とした都市再生事業です。
市はこの都心軸を「成長エンジン」と位置づけ、経済活性化と文化の振興を両立させるまちづくりを進めています。背景には、約60年ぶりとなる新潟駅の大規模リニューアルや、新潟開港150周年、「佐渡島の金山」の世界遺産登録決定など、まちづくりの好機が重なったことが挙げられます。
このプロジェクトの基本方針は、「稼げる都心づくり」「地域連携による新たな価値の創造」「市民が主役のまちづくり」の三本柱です。
具体的には、都心部の商業や業務機能の強化、各区との連携による都市全体の価値向上、市民参加による魅力的な公共空間の創出が掲げられています。既に新潟駅周辺の整備や高架下施設「CoCoLo新潟」の開業、「にいがた2km学校」の設置、古町地区でのリノベーションまちづくりなどが進行中です。
このような包括的な再開発は、駅前だけでなく、旧市街である古町や、海辺に位置する万代島など、異なる性格を持つ都市要素を有機的に接続し、都市全体の一体感を創出しようとする意欲的な挑戦と言えます。
第2章 展望:経済・文化・市民参加による都市の再構築
「にいがた2km」には、いくつかの展望が見込まれています。
第一に、駅周辺や万代エリアにおける高機能オフィスや商業施設の整備によって、企業誘致や雇用創出が期待されています。特に、ICTやデジタル分野の企業を呼び込むことで、若年層の働く場を創出し、地域経済を内側から活性化させる効果が見込まれます。
第二に、文化・観光資源の磨き上げです。信濃川や萬代橋といった水辺空間や歴史的建造物を活かし、市民や観光客にとって魅力的な風景・体験を提供する都市空間の形成が進められています。これにより、交流人口の拡大と観光収入の増加が期待されます。さらに「にいがた2km学校」などの市民参加型プログラムは、地域への愛着や誇りを醸成し、まちづくりの担い手育成を目指しています。
第三に、公共空間の再編による暮らしの質の向上が挙げられます。道路空間の歩行者中心化や、緑地の拡張、イベント活用によるにぎわいの創出は、市民にとって心地よい日常の風景をつくり出し、都市の魅力度そのものを高めています。
第3章 人口減少時代の都市再生
一方で、「にいがた2km」にはいくつかの重要な課題も存在します。
第一の課題は、人口減少と若年層の流出です。新潟市に限らず地方都市全体が直面するこの問題は、都市活性化の努力が長期的な定着へと結びつくかどうかに大きく関わります。単に施設を整備するだけではなく、「ここで働きたい・暮らしたい」と思えるような魅力的な都市文化やライフスタイルを提示していく必要があります。
第二の課題は、老朽化した都市インフラの更新の停滞です。特に古町地区には老朽ビルや空き店舗が多く、建て替えや耐震化が進んでいないことが課題となっています。再開発には多額の投資が必要となる一方、採算性をどう担保するかという現実的な問題も横たわっています。
人口減少時代には、「強くない需要・投資意欲」と「担い手不足」とを前提にした構想立案が重要だと考えます。
まずトップダウンで大きな都市軸を描き、その実現に向けて規制緩和で誘導していこうというスタンスでは限界があるのではないでしょうか。
成長経済を背景にして新旧市街地に伸び切った対象範囲に対して「賑わい・集客力」を取り戻そうというゴール設定は無理があります。
それは新潟だけではなく、新旧市街地を抱える全国の中核都市の共通課題だと言えます。
本シリーズではこのような認識をもとに、「関わり資本」をキーワードで地方中核都市の再生について検討します。
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