【内容】
「健康まちづくり」推進の背景:国の思惑
個人の老後不安
エイジング・イン・プレイスの実現
1.「健康まちづくり」推進の背景:国の思惑
超高齢社会の到来を控え、「住民ができる限り健康で幸せを実感できる」まちの実現を目指して、まち全体の環境を整備する「健康まちづくり」に取り組む自治体・地域が増えています。
誰も反対のしようが無いコンセプトなのは理解できますが、どうして一斉に唱え出したのでしょうか?
この背景には、2005年を境に、日本が人口減少時代に突入しており、2055年には人口が2020年比で3割(約3,600万人)減少し、65際以上の高齢者が約4割になると予測される人口構成があります。
加えて、厚労省のアンケート(平成24年:終末期医療に関する調査)では、「60%以上の人が、自宅での療養を希望している」という報告をしています。
この2つを重ねると、
支え手となる現役世代が減少し、社会保障費(医療費+介護費)が膨張の一途を辿るため、従来通りの病院での高齢者医療サービスの維持は困難。
一方「最後まで、自宅に住み続けたい」という要望も高いため、病院及び施設介護から在宅医療・在宅介護ニーズへの対応が必要。
従って、「男性8年、女性12年」と言われる平均の【寝たきり期間の短縮】と、できる限り【地域で支える仕組み】が必要。
という構図が浮かび上がってきます。
社会保障費の膨張を抑えるため、高齢者サービスの【病院・施設介護から在宅での医療・介護】にシフトしたいという国の思惑が感じられます。
つまり「健康まちづくり」とは、高齢者の「健康長寿」を支えるまちづくりだという事です。
2.個人の老後不安
人生100年時代と言われる時代、老後費用はいくら必要なのでしょうか?
一番気になるのが「介護費用」です。「生命保険文化センター:生命保険に関する全国実態調査」によると、在宅介護と施設介護で大きく異なります。
在宅介護の場合、要介護度によって異なりますが、平均月額5万円程度と言われます。
これに加えて住宅内の段差解消や福祉用具の購入などで、初期費用として平均74万円程度が必要になります。
これに対して施設介護では、初期費用(基本は家賃の前払い金)平均185万円、月額費用平均18万円となります。
これに加えて、医療費の負担があります。(厚労省:平成30年度医療保険に関する基礎資料)医療費は75〜79歳年額77万円(月額6.4万円)から90〜94歳年額113万円(月額9.4万円)になりますが、健康保険及び高額医療制度により、自己負担額は14.4万円(月額1.8万円)が上限になっています。
3.エイジング・イン・プレイスの実現
エイジング・イン・プレイスとは、「住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最後まで続ける」という考え方です。
介護期間は、在宅介護が平均5.1年、施設介護が3.5年で合計8.6年となっています。
平均年金収入は毎月12万円程度と想定されますので、在宅での医療・介護の方が、個人的にも不安は少なそうです。
エイジング・イン・プレイス社会は、社会全体としても個人的にも、理にかなっているのではないでしょうか。
本シリーズでは、このような視点から「健康まちづくり」について、考察したいと思います。
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