【内容】
ますます減少する「歩く」必要性
「ウォーカブル」への注目
「ウォーカブル」な環境
1.ますます減少する「歩く」必要性
コロナ禍で会社に出社できず、自宅でリモートワークすることになり、体調を崩した人が結構多かったのではないでしょうか?
調査会社の報告(PRIME TIME:2020年4月)では、1日の平均歩数は、リモートワークに伴い「7,900→6,700歩と1,200歩余り減少」し、「43%の人たちが、運動不足、肩こり、腰痛を感じた」という結果があります。
通勤や営業活動に伴う歩行が、無くなり運動不足を実感したわけです。
買い物でも、ネットショッピング普及によって、わざわざ店に足を運ぶ機会が減っています。
国交省の「都市における人の動きとその変化(2015年)」という調査によると、世代別の外出率は、若者になるほど減少し、しかも年々減少しているという結果になっています。
都市はますます便利になり、体を動かす機会と必要性がどんどん減っているのです。
「意思を持って歩く仕組み」、或いは「歩きたくなるような環境」を整えないと、「人が歩かない都市」になってしまうのです。
2.「ウォーカブル」への注目
歩くことの健康面での効用は、以前から認識されていました。
ウォーキングの実施率は、4,913万人(年1回以上47.5%:笹川スポーツ財団2020年調査)になります。
これは他の運動実施率(サッカー436万人、野球384万人、スポーツクラブ254万人)に比べて圧倒的な多さになります。
運動の実施率は、国民の健康増進に向けた施策を考える上で非常に重要です。
国民全体の健康寿命を伸ばす「健康まちづくり」には、外出して歩き、知人と交流することが有効だと言う訳です。
また、外出する人が増え「地域コミュニティが育成」されることは、災害時の迅速な避難行動や支援行動にも対応でき「防災まちづくり」の視点でも重要な事がわかっています。
さらに「街歩き」は、異質な人とのカジュアルな交流を促し、イノベーションを生み出すためにも有効です。
丸の内などの都心部の再開発では、「イノベーショナルな(技術革新が起こりやすい)環境づくり」を推進するために、「グランドレベルでのパーソナルな表現と交流」に注力しています。
2000年台後半から、街づくりの様々な局面においては「ウォーカブル(歩いて楽しい)」な街づくりというキーワードが現れるようになります。
3.「ウォーカブル」な環境
「ウォーカブル」という考え方は、まず、郊外の大型ショッピングセンターに対抗する、地方の中心市街地の活性化方策として、提唱され始めます。そして近年では、大都市部のエリア間競争に勝ち残る方策として、ウォーカブルや回遊性を重視した街づくりが注目を浴びています。
ところが、実際に歩いてみるとわかりますが、歩いて楽しいと思える街は非常に少ないのが現状です。
タワーマンションが立ち並ぶベイエリアは元より、オフィスや住宅ばかりが立ち並ぶ街を歩いても面白くないのです。
つまり「歩く事しかできない街はつまらない」と言う訳です。
都市計画家のヤン・ゲールは「魅力的な街とは、歩く人以外の人が多い街だ」とコメントしています。
楽器を奏でる人、踊る人、読書する人、編み物する人、雑談する人、昼寝する人などなど、様々な屋外行動が想定されますが、日本の街は、この屋外行動が特に乏しくて寂しいのです。
「ウォーカブル」な街とは、安全に歩けるだけの街でなく、様々な屋外活動をしている人を見ながら「歩く事を楽しめる街」ではないでしょうか。
そんな視点で「遊歩都市」について検討します。
よろしくお願いします。
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