【内容】
文化施設の単体運営の限界
周辺開発促進の可能性
文化都心を目指したマネジメント
1.文化施設の単体運営の限界
文化施設のコンセッションを研究した成果として、「文化サードプレイス」に転換する事で、孤立立地に特定目的施設として運営される既存文化施設を、事業化する可能性を見出しました。
その柱として、「A地力の向上」「B多様な文化体験の提供」「C企業活動との連携」の3つの施策を提示しました。
FIACS 内で共有したところ大手ディベロッパーのメンバーから「文化サードプレイスが、文化施設のコンセッションの方策として有効な事は理解できたけれど、いろいろ手間をかけた成果が、年間数千万円程度の利益では、社内決済が通らない」という率直な意見が出ました。
おそらく企業の論理として「本音」なのだろう。
この「本音」を超える参画価値を提示できない限り、創業の地の場合などその場所に深い関わりのある企業以外では、大手ディベロッパーをはじめとする幅広い事業者を巻き込むことは難しいという事になります。
文化施設単体での運営の限界と言えるのではないでしょうか?
2.周辺開発促進の可能性
上記のような課題に対して、FIACSのアドバイザーをお願いしている大阪公立大学教授の橋爪 紳也氏から「欧米では文化施設などは、都市の中で開発の遅れた地域(ブラウンフィールド)の開発を促進するために、戦略的に整備されているケースが多い。文化施設単体ではなく、地域全体を活性化するマネジメントの一環として位置付けてはどうか」というアドバイスを受けました。
具体的な事例として橋爪先生が参画された「大阪城公園の活性化を起点とした周辺の都市再生」を挙げられました。
大阪城エリアは、梅田と難波を結ぶ大阪の都心軸から東へ約4kmに位置し、交通ターミナルでもない立地でしたが、近年 大阪城公園の民営化によって、国際的な観光名所として活性化したのを機にして注目を集め、大阪公立大学のキャンパス開設やホテル・オフィスの開発など周辺整備構想が目白押しになっています。
3.文化都心をマネジメントする
100haを超える大阪城公園の活性化とその周辺開発は特異な事例かもしれませんが、ミュージアムやホールなどは、都市部においても都心の繁華街ではなく、比較的大きな敷地を確保できる公園などの中に整備される事が多いため、この視点を応用すれば、エリア開発の推進が可能になると考えます。
「文化都心」とは、六本木ヒルズの開発コンセプトになったキーワードで、オフィス・商業・住居などが、文化施設と一体となった都市開発を意味します。
物理的に一体化することは難しいかもしれませんが、エリアマネジメントの視点で文化施設を中心にして、地域全体の価値向上を図ることで、周辺の都市開発を促すことは可能だと考えます。
このような視点で本シリーズでは、文化施設を中心にして、周辺開発を促す都市のマネジメント方策を検討します。
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