【内容】
コロナ禍で転換したライフスタイル
2030年予想の10年前倒し
駅でも人手不足
1.コロナ禍で転換したライフスタイル
2023年度の大手私鉄各社の鉄道事業は、コロナ禍の危機を脱したものの、旅客者数は2019年度比で80%台前半に落ち着いています。
九州や関西、中京圏の旅客者数が、コロナ前比で80%後半まで回復しているのに比べ、首都圏各社の回復が鈍く、特に東京メトロは、78.6パーセントに止まっています。
これは、IT比率が高く、テレワーク可能な就業者の比率に比例していると言えるのではないでしょうか。
テレワークを体験し、通勤移動の無駄とストレスとを実感した都心ワーカー達が、コロナ収束後に全く元通りの就業スタイルに戻る、という事は期待できないというのが多くの有識者の見解です。
2.2030年予想の10年前倒し
鉄道事業は損益分岐点(固定費)が高く、旅客数が2割減少すると採算割れに陥ると言われます。
人口減少、少子高齢化が顕著になり、地方はもちろん首都圏でも、都心のターミナル駅を別にすれば、都心から50キロ圏の郊外部を中心に、少しずつ乗降客が減少してきていました。
そして2030年には、定期券客が3割減少するとも想定されていました。
2020年のコロナ禍によって、その「想定した未来」が一挙に押し寄せてきたのです。
コロナ禍に伴う緊急事態宣言はテレワークを定着させ、毎日の通勤に伴う移動の無駄と不快感を再認識させました。
このシフトは不可逆的で、都心への出勤は週に2〜3日に止め、残りは在宅ワークという、ハイブリッド勤務が現実的になるのではないでしょうか。
各鉄道会社には、この前提を踏まえた業務改革の推進が、求められています。
業務の合理化や新規事業の立ち上げなどを、懸命に模索していますが、それだけでは収益改善につながらず、抜本的な改革が必要なのです。
3.駅でも人手不足
一方で、駅係員の業務の日常は、かなりハードと言えます。
始発から終電までの駅管理があるため、医師・看護師や消防隊員などと同様に、「泊まり込み業務」が通常になっています。
夜9時から朝9時までの「泊まり込み業務」が、週3回ある「シフト勤務」です。
業務内容も、お客さまの駅係員に対する「信頼感」でもあるのですが、「駅のことなら、なんでも相談される」という状況です。
「トイレはどこにあるのか?」や「〇〇に行くには、何番出口から出るのが近いのか?」といった駅構内の案内だけでなく、「近くに、安くて美味しい居酒屋はないのか?」や「お土産には、何を買えば良いのか?」などの相談まで届く有り様です。
もちろん「この切符で、どうして自動改札機を通れないか?」という精算についての、さまざまな問い合わせも日常的です。
さらに暴風雨や人身事故などでの「運転見合わせや遅延」ともなると、一気に駅構内は人で溢れ、駅係員には「何時に運転再開するのか?」や「振替輸送はどうなっているのか?」「〇〇に一番早く着くには、どの経路で行けば良いのか?」などの切迫した問い合わせ(非難)が殺到します。
このようにハードな駅係員の仕事ですので、希望者も減り人手不足の中で、如何に駅の管理水準を維持できるのかについて、頭を悩ましている状況です。
鉄道各社も「働き方改革」をテーマに、さまざまな方策を模索していますが、なかなか解決策は見つからないようです。
今シリーズでは、このような前提を踏まえて、「次世代の駅のあり方」について検討していきます。
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