【内容】
1.ステージ型体験プログラムの限界
2.「蜷川実花展」の没入感
3.「没入志向」の体験プログラムの可能性
1.ステージ型体験プログラムの限界
ライブミュージアムの体験施設としては「楽器に触れることができる」や、アバ・ザ・ミュージアムのように、「5人目のメンバーとしてステージに立てる」プログラムが想定されます。
古賀政男音楽博物館でも、カラオケスタジオで「収録してCD制作できる」プログラムが有りました。
ただし、この手の体験プログラムに対して、日本人は「苦手意識」を持つのでではないでしょうか。
海外のライブレストランなどでも、パフォーマーから招かれると、ノリよくステージに上がって踊る欧米の客に対して、尻込みしてしまう日本人客を見かけます。
ステレオタイプ的かもしれませんが、日本人は「ステージの上でキメる」のではなく、「みんなと一緒にハマる」方が性に合っているのだと考えます。
この性向を踏まえた体験プログラムにしていかないと、利用性の低い施設になってしまいます。
実際 古賀政男音楽博物館のカラオケスタジオも、ほとんど利用者は見当たりませんでした。
2.「蜷川実花展」の没入感
虎ノ門ヒルズの高層部にある文化施設「TOKYO NODE」で、「蜷川実花展」が開催されました。
2023年末から約3ヶ月で25万人の観客を集めた展覧会で、「地上200mの桃源郷」をテーマに、写真だけでなく、映像インスタレーション、立体展示などで、光彩色の世界が広がっていました。
東京の夜景をバックにした映像インスタレーションのインパクトもさることながら、最も華やかなのが「蝶の舞う景色」エリアで、色とりどりの花の立体展示と蜷川氏によって撮影された庭園や公園の花壇に咲く花の写真とが、「迷宮の花園」を作り出していました。
鑑賞者はこの世には無い花園のソコココで、桃源郷にいる自分を写真に収め、 SNS発信していました。
日本人に向いた「体験プログラム」は、このような「没入型プログラム」では無いでしょうか?
3.没入志向の体験プログラムの可能性
蜷川実花展では、リアルな立体展示で、「没入体験」を演出しており、非常にコストが掛かっていそうでした。
しかし近年では、角川武蔵野ミュージアム内の「本棚劇場」のようにプロジェクションマッピングを駆使したり、床・壁・天井の360°映像による「イマーシブ・ミュージアム」のように、よりローコストで様々な演出をしている事例も出てきています。
没入体験のポイントは、その体験を SNS 発信できるかどうかにありますから、ライブミュージアムでの没入体験では、本物のライブや公演会場では難しいシーンが有効です。
ライブ会場の中の興奮だけでなく、ステージバックの風景や、ステージ上のアーティストが声援に反応してくれる、自分に向けたメッセージをくれるなど様々なシーンが想定可能です。
そんなリアルでは難しいオリジナルシーンを撮影して、SNS発信するような行動を積極的に演出してはどうでしょうか。
恥ずかしがり屋の日本人だからこそ、みんなと一緒にハマれる「没入志向」の体験プログラムが有効だと考えます。
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