都市の魅力を表す「指標として適切な人口」を何なのでしょうか?従来通り住む人(居住人口)や働く人(就業人口)が指標で良いのか?これまでは自分が働く場所を中心にして、住む場所を考えてきましたが、コロナ禍を経てリモートワークが定着し、どこでも働ける(=どこでも住める)時代になりました。これからは住む場所は働く場所に関係なく、「ワザワザ繰り返し訪れる街」が自分にとって魅力ある街と言えるのではないでしょうか。「ワザワザ繰り返し訪れる人=共感する人(共感人口)が多い街こそ魅力ある街である」と定義できると考えます。共感人口は地方創生施策に登場する関係人口の近似した考え方と言え、関係人口との比較で特性を説明することがわかりやすいと思います。
関係人口とは「観光以上移住未満」の人たちを指し、これまでは主に「過疎に悩む地方」で、定住人口を増やすには至らない環境下における活性化方策として活用されてきました。
これからはコロナ禍に伴うライフスタイルの変化により、「都市」にこそ関係人口が必要ではないかと考えます。
これまで都市ではオフィスへの通勤を前提に、膨れ上がる昼間人口(就業人口)を基盤として、昼休みや会社帰りの立ち寄り利用で、外食、ショッピング、エンタメなどの都市型余暇サービスが成立していました。都市は「働機能」という強力なマグネットと、これに付加した「遊機能」によって成立してきたのです。コロナ禍に伴うリモートワークの定着によって、通勤は「特別なもの」になり、立ち寄り利用程度の誘引力しかない遊機能は削ぎ落とされることになりました。大手居酒屋チェーンのトップが語るように「将来需要はコロナ前の8割」前提で考える必要がありそうです。これからは「わざわざ訪れる価値を伴うサービス」だけが、生き残れる時代になると推察します。都市は働機能に付加した遊機能ではなく、ワクワクしながら繰り返し訪れたくなる目的地を集積させる必要があるのです。
人が繰り返し訪れるには、関係人口施策における「関わりしろ」が必要です。地域産業論研究者の松永永子氏によると、「これからは仕事の場、雇用の場がある地域よりも、何かしら新たな仕事を作っていくことが出来る土壌に、意識や志の高い人々が引き寄せられるだろう」とコメントしています。これまで都市では、経済合理性の大きなシステムに組み込まれてしまうため、自己効力感や達成感を発揮できず、「東京都〇〇区よりも過疎地の〇〇村の方が、やりがいを感じる」という理由で、わざわざ地方に向かっていました。ですからこれからは、自己効力感や達成感を感じることの出来る「共感余地」を、都市に作る必要があるのです。巨大な経済合理システムとは別の生態系を持つ、興味や好奇心などの「知縁」を元にしたコミュニティやサブシステムの上であれば、「共感余地」が実現可能ではないでしょうか。都市型関係人口施策です。関係人口の提唱者の一人である指出一正氏によると「これからは若者が地域との関係を作るためにお金を払う時代になる」と語るように、これからの都市には、自由とともに共感・繋がりの仕組みが必要なのです。
どこでも働け、どこでも住める時代。都市の価値は、居住人口や就業人口ではなく、共感人口で測られる時代になると考えます。
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