【内容】
1.街なかの「手軽な居場所」
2.「可動産」としてのモビリティ
3.「可動産」開発のイメージ
1.街なかの「手軽な居場所」
コロナ禍を経て、オートキャンプのニーズが高まりました。
自然の中で、「手軽に居場所」を作る手段として、自動車(モビリティ)が見直されたのだと考えます。
同じように、都市部の屋外において「手軽に居場所」をつくる手段として、モビリティを活用することは、非常に有効ではないでしょうか。
技術革新が進みMaaSと自動運転技術とが定着すると、自動車交通の効率が高まり、道路における移動利用の縮小が想定されます。
「道路におけるプレイス化の潮流」です。
国交省では「2040年道路の景色が変わる」という構想を提示し、交通量の少ない時間帯を利用して路肩空間(カーブサイド)にフードトラックなどが停車して営業できるようなイメージで利活用が模索されています。
街路だけでなく、公園・広場や駐車場で定期的なモビリティ・マーケットとして定着すると、街なかの「手軽な居場所」づくりの手法として非常に可能性を感じます。
2.「可動産」としてのモビリティ
屋外における「手軽な居場所」としてのモビリティは、利活用時間は限定されますので、固い建物の「不動産」ではなく、変化・移動できる「可動産」と言う新しい事業領域が生まれます。
人通りの大小や季節、時間によって入れ替わり、街に変化と彩りをもたらす非常に魅力的な街づくりアイテムになると考えます。
トヨタ自動車が2018年に CES で発表した「e-palette 」は非常にインパクトのあるコンセプトでした。速く移動する自動車ではなく、「可動産」車は自動運転とも相性が良く、生活街路でも対応可能です。
既存のキッチンカーのように「弁当販売」に特化するのではなく、「クラフト(自家製)」をコンセプトに店舗を開いてはどうでしょうか。
服飾、雑貨やアクセサリーから各種アート作品、工芸品などの移動販売や各種ホビー教室や占いサービス、趣味サークルの発表会などが開けると素敵です。
「可動産の店舗」は限られたスペースですので、提供サービスも限定的になります。
一台だけでは集客力に乏しいかもしれませんが、屋台と同じく5−6台集まるとメニュー・バリエーションが増え存在感を発揮します。
3.「可動産」開発のイメージ
「可動産」思考で都市を開発するには、下記のような留意点が浮かび上がります。
①建物低層部ではモビリティショップの設置を想定した構造・設備整備
②建物外構部分においてもモビリティショップの設置やアウトドアリビングに対応した構造・設備を整備
③道路空間でもカーブサイドを中心にモビリティショップの設置対応を想定 などの整備イメージになります。
その効用として臨機応変に設置されるモビリティショップにより、ユーザーが変化に富む様々なサービスを享受できるとともに、プレイヤーサイドでも気軽なトライや小資本でのサービス機会を提供可能です。東南アジアの夜市のようなカジュアルで楽しい賑わいが可能になりのです。
オープンスペースの活用ではランチ対応のフードトラックビジネスが一般的ですが、現状ではお昼前後に提供される客単価700円の食物販としてしか機能していません。
できれば博多の屋台のように滞留客や目的客(=高単価客)を誘発できるような設えが望まれます。
モビリティショップとして地域の特性やニーズを踏まえながら、色々と変化・更新していければ素敵だと思います。
EV&自動運転化すればトヨタのコンセプトカー「eパレット」のように複数のモビリティショップによるマーケットの形成も可能になるのではないでしょうか。
これまでに提示した、マチ屋根ひろばとの相性も良く、雨の多い日本の特性に合わせながら、時間帯による繁閑格差にも対応した賑わいづくりが可能になります。
都市の顔になる部分が、このように柔軟で多彩な表情を持つことが可能になると、ユーザー&プレイヤー、さらにディベロッパーの「街に対する価値観」が一新すると考えます。
Comentários