【内容】
1.施策の実績
2.効果と現状
3.「認識転換」の必要性
1.施策の実績
2014年に施行された国のビジョンと総合戦略に基づいて、すべての都道府県と1,740市区町村において人口ビジョンと総合戦略とが策定済みです。
具体的施策とその実績を整理します。
①地域おこし協力隊の拡充
地域おこし協力隊とは、「お試し移住」的な制度で、自治体から任命され、地域ブランドや PR、農林水産業への従事などの地域協力活動を行い、報酬を受け取ります。
任期は一年以上三年以内で、1085団体、6,015人(2021年)が活動しています。
政府は2025年度までに10,000人に増やす目標を掲げています。
任期終了後も、その65%が、同じ地域に定住しています。
②政府機関の地方移転
文化庁の全面的な京都移転、消費者庁の一部機関の徳島移転が代表的ですが、中央省庁の7機関、研究機関・研修機関の23機関で地方移転が決定しています。
③東京23区の大学の定員抑制
地方大学の経営悪化を防ぐ目的で、2028年までの時限措置として、東京23区内の大学の定員増を認めない方針を閣議決定しています。
④地域経済分析システムの稼働
地域経済に関わる様々なデータを可視化するため、地域経済分析システム「RESAS」が開発され、出前講座、政策立案ワークショップ、アイディアコンテストなど活用に向けて、様々な取り組みが行われています。
⑤交付金の活用
地方創生関係の交付金としては、当初予算1000億円、補正予算600億円など、毎年多額の予算が用意されてきました。
2016年度から2018年度までの累計で、全国1300市区町村が活用していますが、総採択額は1400億円弱に止まっています。
予算消化率が高くない背景には、自治体の1/2負担が挙げられますが、交付金を上手く活用している自治体と、ほとんど活用できていない自治体との地域間格差が、明らかになってきています。
交付金の活用には、自治体の「地力」が必要だということです。
2.効果と現状
①人口減少・少子高齢化の一層の進展
日本の人口は、2008年の1億2,808万人をピークに、2021年では、1億2,570万人になっています。
人口の推移は当初より厳しくなり、2048年には、9,913万人と1億人を割り込み、2060年には、8,670万人まで減少すると予想されています。(国立社会保障・人口問題研究所)
生産年齢人口(15〜64歳)も、2014年の施行時7,785万人、2022年は、7,450万人(−335万人・4.3%減)となっています。
出生数の減少はさらに厳しく、2014年100万3,532人、2021年81万1,604人(−19万1928人・19.1%減)となっています。
正しく人口減少・少子高齢化の一層の進展と言えます。
②東京一極集中の継続
転入超過数、2014年116,048人、12万〜14万人で推移し、コロナ禍後は、9万人代になり、2022年99,519人と上昇に転じています。
当初目標の転入抑制は難しく、一極集中が継続しています。
東京圏の人口は4434万人(2020年)で、全体の35.9%になっています。
3.「認識転換」の必要性
施策の実績は有るものの、人口減少・少子高齢化及び東京への一極集中には、歯止めがかからない状況と総括できるのではないでしょうか?
2019年に策定された第二期の方向性では、4つの基本目標について、従来の枠組みを維持しつつ、「関係人口」「Society5.0」「SDGs」「ダイバーシティ(=女性活躍)」などの観点が追加されていますが、これらの軌道修正で目的を達成できるかは疑問です。
シン地方創生には、従来方針の軌道修正を超える「認識転換」が必要ではないでしょうか?
次回では、「シン地方創生のための課題」を取り上げたいと思います。
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