【内容】
1.既存の地方創生における課題認識
2.若年層の定住主義からの認識転換
1.既存の地方創生における課題認識
政府では、2019年に地方創生第一期の検証会が開かれ、府省庁・制度ごとの「縦割り」構造、地域特性を考慮しない「全国一律手法」、効果検証を伴わない「バラマキ」、地域に浸透しない「表面的な」取り組み、「短期的」な成果主義などの問題点が指摘されました。
その上で、地方創生が第二期おける新たな視点として下記の6点を提示しています。
①地方へのひと・資金の流れを強化する:将来的な地方移住にもつながる「関係人口」の創出・拡大、企業や個人による地方への寄付・投資の促進。
②新しい時代の流れを力にする:Society5.0 の実現に向けた技術の活用、 SDGsを原動力とした地方創生、地方から世界へ。
③人材を育て活かす:地方創生の基盤をなす人材に焦点を当て、掘り起こしや育成、活躍を支援。
④民間と協働する:地方公共団体に加え、 NPOなどの地域づくりを担う組織や企業と連携。
⑤誰もが活躍できる地域社会をつくる:女性、高齢者、障害者、外国人など誰もが居場所と役割を持ち、活躍できる地域社会を実現。
⑥地域経営の視点で取り組む:地域の経済社会構造全体を俯瞰して地域をマネジメント。
いずれも、従来の基本目標を達成するために、時代に対応して軌道修正した内容になっています。
2.若年層の定住主義からの認識転換
東京への一極集中の是正が掲げられた地方創生ですが、その効果は見られず、毎年10万人前後の転入超過が続いています。
その内訳を見ると、10代後半や20代の若者が多くを占め、しかも女性の転入超過数が男性を上回る傾向を示しています。
仙台や大阪、札幌、名古屋、福岡などの大都市からの転入も目立つようになっています。
これまで地方創生は、地方で暮らせる環境を作るため、仕事を作り、子育て支援を図り、移住促進を図ってきました。
この若年層の定住主義に限界があるのではないでしょうか。
その根本要因は「年収格差」にあると考えます。
近年、企業も賃上げに前向きになり、最低時給も全国平均で1000円を超えるようになってきましたが、東京の平均年収は451万円で、大阪の407万円、愛知の375万円を大きく引き離しています。
帝位の青森297万円、宮崎300万円、沖縄302万円などと比べると1.5倍に及びます。(厚労省・賃金構造基本統計調査2022年)
さらに平均年収だけでなく、東京では「大きく稼ぐこと」が可能なのです。
申告所得が1億円よりも多い納税者数は、東京都9014人(10万人あたり65人 2020年)、神奈川県1886人、愛知県1564人と続いています。
全国で23,000人ほどと言われますので、約4割が東京にいることになります。
もちろん生活費も東京と地方では、変わります。
食料費などは、東京と福岡を比べると5%ほど、高くなり、住居費は、東京都の平均家賃相場が約15万円なのに対して、福岡は約6.4万円で済みます。
やはり「経済活動の場」として東京には夢があるのです。
男女の賃金格差や非正規雇用の問題など、若い女性が地方で働きにくい要因を検討し、改善を図っていくことはもちろん必要ですが、未来に希望を抱く割合が多い若年層の、地方定住を主眼にすることは無理があるのではないでしょうか。
次回はこの認識転換を元に、シン地方創生の基本方針を検討します。
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