【内容】
論点整理
街づくりは「地力作り」
「築技を活かした食体験」による地力づくり
1.論点整理
これまでの論点を整理します。
築地場外市場(以下「築地」)は、関東大震災で被災した「日本橋魚河岸」の移転に伴う「築地市場」に付帯した「仲卸市場」が中心になって形成された商店街。
食品流通の自由化や観光地化、そして豊洲移転など、様々な変化に対応しながら生き抜いてきましたが、築地再開発との連携という課題に取り組んでいます。
食品流通を円滑にするため重要な枠割を担ってきた「卸売市場」ですが、取引自由化の流れの中で、徐々に売り上げを落としており、時代に対応した市場の位置付けと役割とを模索しているのが現状です。
世界一の魚市場と世界有数のグルメタウンとの接点に位置する「築地」は、豊な食材を吟味し、一流の料理と組み合わせる切磋琢磨の中で、「食のイノベーション拠点」として「築技(つきわざ)」を生み出してきました。
「築技」を持つ老舗専門店が苦境に立つオーバーツーリズム状態に対応しながら、築地再開発との連携も含めて、「築地」のアップデートが求められています。
このままでは、「築技」を持つ老舗専門店は疲弊し、築地再開発が開業する2032年には、単なる観光飲食街になってしまう危険性があります。
「築地」と特性を活かしたアップデート方策を模索していく必要があるのです。
2.街づくりは「地力づくり」
街づくりの目標に「賑わいづくり」を掲げる地域が多くあります。
もちろん「賑わい」は重要ですが、それは「結果」であって「目標」にすべきではありません。
特に「築地」では、インバウンドを中心とした観光化の波が、「築地」の根幹である「仲卸の業務地」と言う機能を脅かし、築地を支えてきた老舗専門店を疲弊させているのですから、無闇な集客・賑わいづくりは逆効果といえます。
「文化」は単体で成立するものではありません。
文化は一種のエコシステムで、一定の枠の中で、お互いに目線を合わせて高め合いながら切磋琢磨していく中で、洗練していくものだと考えます。
「築地」の食文化も、鮮度と旨味とを究める人たちによって磨き抜かれてきた「食流通の仕組み」によって、築き上げてきたものです。
お客の目線が観光目的や一見での物珍しさだけを求めるようになると、これに対応する商売人の目線も下がっていくのではないでしょうか。
単に観光客に海鮮料理を提供するのではなく、「築地」の食文化を体験してもらうことにヒントがあると考えます。
「築地」の食文化を活かした「地力づくり」こそ、「築地」の街づくりの目標だと考えます。
3.「築技を活かした食体験」による地力づくり
日本中から集まる豊かな食材を吟味し、世界有数のプロの料理人たちの厳しい注文に応えながら磨き上げてきた、「築技」こそ「築地」の魅力・個性と言えます。
今それがオーバーツーリズムの中で疲弊しているのだとしたら、未来にむけた「築地」アップデートの方向性は、「築技」のコンテンツ化によるファンづくりになるのではないでしょうか。
「築地」を訪れるインバウンド客の目的も、単に「美味しいものを食べたい」だけでなないはずです。
「築技を活かした食体験」をコンテンツとして提供できれば、「築地」の食文化の奥深さ、豊かさに感動し、単なる観光客ではなく「ファン」になってくれるのではないでしょうか。
そして「築技を活かした食体験」が、インバウンド客を含めて日本の食文化の拡張に有効であることが認知されると、「築技」によって鍛えられる事を望む、新世代の料理人やプレイヤーの育成に繋がります。
「築技を活かした食体験」づくりこそ「築地」の地力づくりだと、確信します。
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