【内容】
1.くらす広場の居心地
2.広場づくりの作法
3.屋外での居場所づくり
1.くらす広場の居心地
JR南武線の稲城長沼駅周辺の活性化事業として、地域のコミュニティ活動「くらすクラス」の設立を支援し、その拠点として「くらす広場」を計画しました。
約350㎡のくらす広場は、高架下の圧迫感を軽減し、居心地を確保するために、2.7メートル角の穴あきフレームで構成されています。
高架下のスペースでは、天候に関係なくマルシェ・イベントが開催できますが、このフレームは、マルシェの区画を区分すると同時に、間仕切りシートや照明を取り付けることが可能になっています。
さらに看板や商品をぶら下げることによって、平面的になりがちな、広場でのマルシェ・イベントが立体的に演出できるという効用もあります。
このように巨大な構造物の足元に、フレームを配することで、居心地と利用性を向上させ、人の滞留を促す事が可能になります。
2.広場づくりの作法
1997年に開業した商業施設「亀戸サンストリート」では、中央に約1,000㎡の広場を設けました。
その計画と運営を踏まえて、広場づくりには「作法」があることを実感しました。
適切な配置と広さ:欧州の街の広場の事例でわかる様に、広場は施設の端っこではなく、中央にあるべきです。できれば道路から隔てられ建物に囲われた配置が望ましいのです。
その上で多様な人がそれぞれの居場所で佇め、イベント時の収容力を考えると1000〜3000㎡の面積が必要ではないでしょうか。
場の温もり:温もりのある場所に人は集まります。ですから広場の外周部は賑わいある店舗で囲われていたり、日常的に子供達がハシャぐ風景が見られる工夫が必要です。
サンストリートでは子供用に手づくりの輪投げや表彰台、水遊び台などが置かれていました。
客席よりステージ:広場というと階段上の客席が計画されることが多いですが、むしろ必要なのはステージだと感じました。
私たちが計画した広場で連日ライブが開催できたのも、出演者をリスペクトするシンボルとして常設ステージがあったからだと考えます。
床、天井の工夫:ただの空地は広場にはなりません。電源の設置はもちろん、ケーブルが通路を跨ぐことを防ぐ床溝の工夫や、テントを立てる際に固定できる基礎を用意する必要があります。
ステージを照らすスポット照明を含め、床や天井にきめ細かな工夫が必要になのです。
運営スタンス:広場を運営するスタンスは最も大切です。「使わせてやる」スタンスでは広場の利用は直ぐに敬遠されてしまいます。
利用者・出演者へのリスペクトが口コミで広がり、次の利用者を呼び込みます。広場の利用者を「顧客」と捉えた「集イベント」の運営スタンスが有効です。
3.屋外での居場所づくり
これまでの様々な広場づくりを通じて、屋外で人が滞留・活動できるようにするためには、ベンチだけではダメで、居場所を確保するための設えが不可欠だと実感しました。
中央線東小金井の高架下には、歩道との境界部分にスチールフレームのファサードが設けられています。
このフレームが高架下の圧迫感を軽減し、道路との結界を作ると共に、コンテナハウスに、店舗らしい「店構え」を演出しています。
神田スクエアの北側広場にも、公共スペースで小さな居場所を生むために、フレーム、ベンチ、カウンターがセットで配置されています。
屋外のワークプレイスや、店舗の拡張スペースとして工夫されています。
地味かもしれませんが、床をアスファルトではなく、ボードデッキにすることも、その場所を「通行」だけではなく、佇んだり、滞留して楽しむ場所だというアイコンになっています。
ますます高度化する環境ニーズに対応するために、屋外でも「床・柱・フレーム」などで、「準建築的な居場所づくり」をする必要があると考えます
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