【内容】
他機能とのコラボ展開
テーマ制「自由特区」による魅力化
1.他機能とのコラボ展開
1.ワークプレイスとしての活用
コロナ禍を経て、リモートワーク(ハイブリッドワーク)とE コマースとが、市民権を得ました。
これまでのように、出社を前提とした「快適なオフィス」ではなく、「わざわざ出かける価値のあるオフィス」が求められています。
さらに商品・サービスのライフサイクルがどんどん短命化し、母体となる企業寿命も20年程度と短くなってきています。
企業には、常に新規事業開発が求められている状況です。
事務処理的な業務は、自宅で済ませ、オフィスで求められるのは、クリエイティブなグループワークが中心になるのではないでしょうか。
こうしたクリエイティブな視野の提供を求めていくと、ミュージアムの環境と、ワークプレイスとの親和性が高いことがわかります。
「どうせ仕事するのなら」「わざわざ集まって会議するのなら」。。。フツーの会議室やコワーキングではなく、美術的な刺激や博物的な刺激を得られる「ミュージアム・オフィス」は非常に有効です。
信州小布施にある「北斎館」には、個別照明やWi-Fi環境が整ったブース形式のコワーキングスペースが併設されています。
まだまだ利用時間の制限など、展示スペースの運営との調整など、課題はありますが、十分に検討が可能だと考えます。
因みに50席のブースがあれば、150人のメンバーに対応可能で、月額1〜2万円の会費を設定すれば、年間1,800万円〜3,600万円の収入になります。これは1,500円の入場料で1.2万人〜2.4万人の入場者数に匹敵します。
2.ビジネスサロンとしての活用
福利厚生は、従来型の社員の生活支援的な側面だけでなく、働きがいや帰属意識の醸成、人材獲得・リクルーティングなどの側面を重視するようになってきています。
そんな福利厚生サービスとして、東京ディズニーリゾートやキッザニアは、非常に有効に機能しています。
オフィシャルスポンサーの社員としてラウンジを利用できたり、自社のアトラクションで子供がお仕事体験できたりすれば、家族へのサービス機会、家族の好感がそのまま会社への帰属意識や仕事への誇りにつながるのでは無いでしょうか。
文化系集客施設の持つコンテンツを、家族や子育てをテーマにアレンジして、スポンサー企業の福利厚生サービスとして提供すると有効だと考えます。
3.ホテル・ブライダルとしての活用
欧米のミュージアムが、会議やレセプションの際の「ユニークベニュー」として活用されることも多いことを踏まえると、ミュージアムの上質な環境や建築は、ホテルやブライダルとして活用すると、サービス価値を高めるのではないでしょうか。
日本最初のテレビ電波塔として建設された「名古屋テレビ塔」は、2022年に国の重要文化財に指定されると共に、「中部電力 MIRAI TOWER」としてリニューアルされ、展望施設のほかに、ホテルやレストランが整備され、人気を集めています。
4.イノベーション・研修の場としての活用
絶え間ない技術革新は、企業が提供する商品・サービスのライフサイクルの短期化を加速させています。それに伴い企業は、既存事業だけでは成長を維持できず、常に新規事業の開拓を迫られるようになりました。
「日本企業のイノベーション実態調査(2016年:デロイト)」によれば、日本企業の売り上げに占める「新規領域」の割合は、2013年の6.6%から2016年には14.1%と倍増しています。業種に限らず企業は、常にイノベーションの機会を求められている状況です。
このようなイノベーション機会を検討する際に、注目をあつめているのが、「アート思考」です。
アート思考については、明治大学サービス創新研究所において、「アーティストが持つ創造性に着目し、アーティストがアートを生み出す過程で用いる特有の認知的活動を指す」と定義されています。
「VUCAの時代」と言われ、不透明感が増すこれからの時代には、ロジカル思考やデザイン思考の課題解決型ではなく、問題設定型のアート思考が、イノベーションを促すのに効果的だと期待されているのが現状です。
ミュージアムのコンテンツを題材にして、このようなアート思考の向上プログラムを提供してはどうでしょうか?
その他、劇場を舞台にした「演劇セラピー」も、コミュニケーションスキルの向上に有効だと考えます。
一般的な研修費用で試算すると年間4,000万円〜5,000万円(4〜5万円/人×20人/組×50組/年)の収益が見込めます。
従来のように「こうすれば上手くいく=正解」がなくなり、時間的・空間的に多様な視点から、問題を設定するアート思考が重要になります。
文化資源の保存・研究だけでなく、ビジネスや実社会が求めるイノベーション・プレイスとして活用していくことは、広義の社会教育ニーズに対応するものだと考えます。
2.テーマ制「自由特区」による魅力化
日本における「お祭り」の重要な機能は、「非日常性」の提供にあります。
日常生活に完全に満足しているという人は、ほんの一握りでしょうから、ほとんどの人は、日常生活の中で、必ず「ストレス、憂さ」のようなものを溜め込んでしまいます。
それらが爆発・暴走しないように、適度に「ガス抜き」して、生きている実感を得るための、「非日常の時間・空間」が必要で、「お祭り」がその役割を担っているのです。
お祭りを見に行くだけならイベントと変わりませんが、一歩進んで参画する関係になった時には、日常のヒエラルキーや役割と関係なく一体感を味わう機会になります。
近年ハロウィンが急速に盛り上がり、クリスマスに次ぐ年間行事に成長しています。
ハロウィンの魅力は何と言っても「仮装」出来る事で、一種の変身と言えます。
東京渋谷や大阪道頓堀は仮装した若者たちで溢れ、街丸ごと仮装パーティ状態です。
「アート」とは「反常識=自由」だともいえます。
文化施設を、期間限定&場所限定で、さまざまなテーマ毎に「自由特区」貸していくのです。
以前、「千代田区立日比谷図書館」のリニューアル開業イベントとして、「騒げる図書館」を企画したことがあります。
普段とは違うイメージの場所で、非日常感を楽しみ、SNS 受けも含めて仲間と一緒に騒げる「お祭りの参加体験」が、堅苦しい日常からの解放を求める人たちを集めるのだと考えます。
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