【内容】
コミュニティ概念の広がり
知縁コミュニティ
動脈系と静脈系のエコシステム
1.コミュニティ概念の広がり
地域コミュニティ、オンラインコミュニティ、コミュニティマーケティングetc.
このようにいろいろな場面で「コミュニティ」という言葉に出会います。
全く異なる分野が、コミュニティという耳障りの良いキイワードで、纏められている状況です。
コミュニティの本来の意味は「特定地域の住民による相互扶助集団」となります。
それが、地域を超え、リアル空間を超えて使用されたり、相互扶助的精神を超えてビジネス用語としても使用されているのです。
現代社会の根本ニーズが「渇望する何か?」がコミュニティには漂っているのではないでしょうか?
経済活動だけ、損得勘定だけのドライな関係は、分かりやすい反面、どうしてもギスギスしてしまいます。
そして何よりコスト高な上に不安が付き纏います。
その将来不安は、過度な防衛反応になり、現状維持思考で不寛容な社会につながります。
一箇所のコミュニティだと、しがらみは嫌だし、息苦しくなってしまいますが、オールフリーも不安なようです。
成長神話の崩壊や将来への不安など、「現代日本の閉塞感」への対応策・処方箋としてコミュニティに期待が集まっているのではないでしょうか。
2.知縁コミュニティ
特定の地域に住む人たちの、交流・互助などを指す「地縁」型のコミュニティに対して、同じ関心事やテーマに基づく、個々人の自発的で緩やかな繋がりによって活動しているのが、「知縁コミュニティ」です。
子育てや親の介護、環境問題などの日々の生活の必要に駆られ、自治会・町内会とは別に、住民が自発的に結びついた活動が始まりです。
さらに生活環境が一定程度整備され、社会全体にゆとりが生まれてからは、生涯学習や文化・趣味活動をきっかけにして広がりを見せています。
鉄道好き、ラーメン好きなどSNSとの相性も良く、ネットワークやサークルという呼び方を含めて、都市で暮らす人間には、より身近に感じるかもしれません。
知縁コミュニティは、地縁のように一定範囲が定まっているわけではなく、居住年数・年齢などの上下関係も曖昧で、千差万別です。
知縁コミュニティの特性を考える際には、マーク・S・グラノヴェターの「紐帯」についてのコメントが、参考になると考えます。
グラノヴェターは著書「弱い紐帯の強さ」の中で、紐帯の強さは「①ともに過ごす時間量、②情緒的な強度、③秘密を打ち明けられる親密さ、④助け合いの程度」の4項目の組み合わせで定義しています。
3.動脈系と静脈系のエコシステム
知縁コミュニティでは、共感テーマを核にして、協賛・協力を含む「幅広い収益」と、達成感やシェア志向による「スリムなコスト構造」とに支えられた、「静脈系のエコシステム」が生まれます。
「売上・利益」を媒体とした、動脈系のエコシステムでは提供できない、静脈系のメリットとして、①新しい関係性と自己表現の場(居場所と出番)の提供。②過度なビジネス思考では、賄えない活動を補完し、人間関係の潤滑剤としての役割。などが挙げられます。
何より成長を前提にした動脈系エコシステムへの偏重が、地球環境とのバランスを崩しつつある現状を踏まえると、静脈系エコシステムの価値を見直す必要があるのではないでしょうか。
様々な共感テーマで人が集まり、直接的な GDPには繋がらないかもしれませんが、静脈系のエコシステムが生まれます。
経済一色や消費者至上主義ではなく、軽やかな自由だけでなく、ちょうど良い鬱陶しさがある、そんな「温もりのある社会」作りに繋がるのではないでしょうか。
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