【内容】
1.「島留学」という発想
2.「教育のサブシステム」の有効性
1.「島留学」という発想
「学びの場」としての地方創生の事例では、島根県の海士町の「島留学」があります。
海士町などの離島では、本土よりも早いペースで人口減少が続いていました。
海士町の県立隠岐島前高校でも生徒は減少の一途をたどり、2008年度の生徒数は全校で90人しかいませんでした。
「このままでは廃校になってしまう」
そこで始まったのが「隠岐島前教育魅力化プロジェクト」で、全国の高校生を対象にした「島留学制度」でした。
「島まるごと学校。島民みんなが先生」のキャッチコピーのもと、島留学生には一人ずつ「島親さん」と呼ばれる島民がついて島の生活に馴染むサポートがあります。
夕飯に呼ばれたり、夏祭りの一緒に行ったりする中で、地域の人たちとつながっていきます。
高校の生徒数は160人を超えかつての2倍に増えています。
さらに2019年からは、全国各地の若者が活用できる「大人のための島留学」がスタートしました。
①3ヶ月の滞在型のインターンシップ制度の「島体験」②プロジェクトに就労しながら、1年間お試し移住できる「大人の島留学」③2年間、複数の仕事を体験しながら新しい島の働き方を探究する「複業島留学」などのメニューを準備しています。
3つの制度を利用した200人のうち、20人が就職・移住しています。
離島留学という発想は全国に広がり、2017年には、全国の留学先を案内する「地域みらい留学」という取り組みが生まれ、25道県、68校が参加しています。
2.「教育のサブシステム」の有効性
島留学のメリットやデメリットは、下記のように整理できます。
【メリット】
①豊かな自然や農山漁村の暮らしや文化を体験できる。
②親元から離れて自立心を養うと共に、都会では体験できない自然環境で生きる力を育むことができる。
③過疎地域や集落の活性化に貢献する実感を得ることができる。
【デメリット】
①ホームシックや環境の変化への適応が難しい。
②高校や大学の受験との両立が難しい
近年 インターナショナルスクールや風越学園の設立で注目され、教育移住が活発になっている軽井沢の事例に見られるように、東京における偏差値志向の受験制度に、不安と疑問を抱く保護者も少なくありません。
変化が大きく、未来を見通すことが難しいこれからの時代には、未来を自分の手で作っていける人材が求められています。
大学入試も主体性や協働性、探究性が問われるものに代わろうとしています。
意識が高く、社会の変化に敏感な保護者にとって「高校3年間を地方で過ごして、これからの社会を生き抜く力を育む」方法として、教育のサブシステムが有効と認識されるのではないでしょうか?
人は成長を実感した時期を過ごした場所を、「ふるさと」として記憶すると考えています。
最も多感で、成長する10代を地方で過ごすということは、その学校の卒業生にとして貴重な関係人口の創出につながります。
こうして生まれる「ふるさと」は、本人にとって、その後の活動拠点の一つとして、常に選択肢に残る場所になるのだと考えます。
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