【内容】
複合的な収益構造の必要性
オープンイノベーション機会の提供
イノベーションキャンパス
1.複合的な収益構造の必要性
スタートアップ支援施設の現状の事業構造は、「安価なサービスオフィス」と言い換えることができます。
都市再生特区などの要件に対応する形で、容積ボーナスと引き換えに開設される場合が多く、賃料負担をある程度低く抑えることが可能になっています。
しかし通常のサービスオフィスが、家具什器などの基本内装を整備し、通信・水光熱費、会議室などの共用施設や受付人件費などを含むため、周辺オフィス相場の2-3倍の坪単価が必要なのに対して、相場以下の賃料で提供している訳です。
加えて複数人のイノベーションマネジャーを配置したり、投資家とのマッチングイベントを開催したりする手間とコストが上乗せされてくるのです。
いくら特区対応施設だとしても、賃貸ビジネスだけでは成り立つはずがありません。
そこで株式上場益の分配などを契約に盛り込んだりするわけですが、上場確率は1%以下といわれますので、甚だ不確定です。
スタートアップ支援施設の運営には、単なる賃貸ビジネスだけではない複合的な収益構造が必要なってきます。
2.オープンイノベーション機会の提供
単にスタートアップ企業を集めて、その成長を促すだけではなく、常に新規事業の開発が必要な既存企業に対して、オープンイノベーションの場を提供してはどうでしょうか。
既存の企業各社は、各々独自にオープンイノベーションを促進するために、会社内に拠点施設を開設する場合がありますが、うまく稼働している例は少ないようです。
セキュリティエリア内に開設する場合はモチロン、例えエリア外に開設したとしても、外部のスタートアップ企業が単独企業のオープンイノベーション拠点にワザワザ足を運ぶことは、よほどのインセンティブがないと難しいのではないでしょうか?
それよりもディベロッパーが、利便性の高い立地で複数企業のオープンイノベーション・プログラムを運営する方が、スタートアップ企業の選択肢が広がり、参加しやすくなると考えます。
オープンイノベーションを希望する企業に拠点を開設してもらい、プログラムの運営費も負担してもらうわけです。
プログラムを提示して、これに参加を希望するスタートアップ企業を選び、1−2年程度コラボして、プログラムが終了したら卒後するのです。
「大学のキャンパスのような雰囲気を持つ」といわれるフランスのステーションFの収益源の一つも同様の仕組みを持っていると言われます。
3.イノベーション・キャンパス
社会課題もオープンイノベーションも一社の力だけでは、解決できないほど複雑になってきています。
これらの複雑なテーマを噛み砕き、具体的なプログラムに仕立てて、既存企業とスタートアップ企業とをマッチングさせ、成果としてまとめ上げる必要があるのです。
単なる賃貸ビジネスではなく、イノベーションを誘発するプロジェクト型の研究組織(イノベーション・キャンパス)と言えるのではないでしょうか。
さらに多彩な企業が在籍する「イノベーションキャンパス」の強みを活かして、一種のシンクタンクとして事業を組み立てていくことも可能です。
行政をはじめとした多様な顧客からの「社会課題プロジェクト」を、ネットワークを活かして解決・提言していくのです。
プロジェクトのマネジメントにはスキルが必要になりますが、スタートアップ支援施設としてのマネジメントが出来れば可能だと思います。
このように考えるとスタートアップ支援事業は、不動産賃貸事業ではなく、シンクタンク運営事業に近いと言えるのではないでしょうか。
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