ある都市開発企業トップとの対話で「最近はRE100 などへの対応も必要になり、屋上緑化など積極的に推進している。企業評価(=株価)は業績だけでなく、環境関連を始めとした様々な指標で図られる時代になった」というコメントがありました。
確かにESG投資が急速に拡大し、2025年には世界全体の運用資産140兆ドルの1/3を占めると予想されています。企業活動においても様々な場面でSDGsへの対応が指摘されます。また健康経営という言葉も定着しつつあります。いずれの動向にも共通するのは業績や設備投資などの「事業的価値」だけでなく、幅広いステイクホルダーを対象にした「社会的価値」への評価の高まりです。健康経営がもたらす生産性向上や欠勤・離職率の低下などは内面的な持続性につながり、SDGsの推進に伴う広義の市場環境整備などは外面的な持続性の必要条件となります。企業価値において事業的価値に準じる形で、持続成長性につながる社会的価値が評価される時代になったと言えます。
またコロナショックを経てリアルな出社・会議など企業オフィスの価値が問われ、さらには「リアル都市の価値」そのものが問われる時代になったと考えます。ダボス会議における「グレートリセット」の議論に象徴されるように、現代都市の基本原理である「集積による経済合理性」を根本的に見直す必要があるからです。
いつでもどこでも働ける時代には、ハイブリッド通勤を前提に「わざわざ出社する価値のある」企業オフィスが求められます。そして郊外住宅地にはない「多様な刺激」をリアル体験できることが都市の価値になるのではないでしょうか。都市の主な役割として「働・利便」の提供ではなく「遊・文化」が重視される時代です。利便性・規模性だけでない街の魅力が求められているのです。
これらの動向を重ね合わせると「どんな街にオフィス(店舗)を構え、どんな活動をしていくのか?が、社員からも社会からも評価される時代」と言えます。街は重要な企業カルチャーの発信舞台であり、一種の「経営資源」だと考えるべきです。街づくり事業は企業活動に大きなインパクトをもたらす「プラットフォーム創り」なのです。
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