top of page
検索
執筆者の写真admin

次世代の都市評価指標⑨ 建築における2つの先進事例

都市開発は常に人・店舗・企業の誘致合戦を繰り返してきました。利便性と容積率という従来指標に最新の機能・スペックを加えて競う為、どの都市開発でも同じようなツルツル・ピカピカのビルが立ち並ぶ状況になってしまっています。このままでは先行事例を研究して最新スペックを搭載する後発開発が、常に優位になる無限&同質化競争から抜け出せないのではないでしょうか。

このような状況の中で建築において2つの先進事例が生まれました。

  1. 虎屋本店

羊羹で有名な虎屋が赤坂の本店の建て替えにあたって、それまでの10階建から4階建の建物に減築するという英断を下したのです。内藤廣氏設計の木をふんだんに使用した空間は、赤坂御所向かいの立地に相応しい風格を備えています。

  1. KADOKAWA本社

総合メディア企業の KADOKAWA が本社を東京都千代田区の飯田橋から埼玉県東所沢に移転したのです。隈研吾氏設計による出版社らしい本の博物館「角川武蔵野ミュージアム」を併設した新本社です。


もちろん両例ともに立地や規模に対して、社内外から様々な意見が寄せられたそうです。しかしリモートワークが主流で「出社がトピック」になりつつある時代には、リアルに人を集めやすい交通利便性と規模だけを重視する必要がなくなったのではないでしょうか。オンライン1stという潮流に対応し、企業活動や企業カルチャーなどをネット上のコンテンツとしてどう発信していけるか、という視点から考えると非常に意欲的なプロジェクトだと言えます。さらに多様なステイクホルダーを巻き込んだコンテンツ発信が、より有効になるという視点で考えると、企業価値向上のためには都心のビジネス街立地よりも理にかなっているのでは無いでしょうか。

東京大学で街づくりを専攻される小泉秀樹教授は「これからの街づくりでは歴史性と真実性とが評価される」と指摘されました。交通利便性だけでなく公園や水辺などの特別感のある立地特性を活かしたり、自社のDNAや土地・建物の歴史を如何に深掘りして発信できるかが重視される時代と言えます。オンライン1stの時代には多彩なコンテンツを発信できる舞台としての街が評価されるのです。まさに「経営資源としてどの街を選ぶか?」によって企業価値が左右される時代と言えます。


最新記事

すべて表示

【方策1】時間シェア 多次元開発 ⑤

【内容】 時間価値の視点 夜時間の魅力と課題 夜市による時間シェア       1.時間価値の視点 以前 東京都心のビジネス街にカフェチェーンを誘致する時、「都心でもビジネス街では、週7日のうち土日の2日間の売り上げが立たないので難しい」と言われてしまいました。...

基本方針 多次元開発 ④

【内容】 これまでの論点整理 今後の課題と可能性 基本方針と5つの施策     1.これまでの論点整理 基本方針を設定するために、これまでの論定を整理します。 都市開発の市場環境では、人口減少に加えて、コロナ禍を経た都心の商業・オフィスニーズの減退という 需要環境...

不動産業の歴史 多次元開発 ③

【内容】 近世の不動産業 近代の不動産業 戦後の不動産業     1.近世の不動産業 不動産業の歴史は古く、2500年前の古代ギリシャには、「不動産」や「抵当権」の概念があったという記録が残っています。 当時からあった土地には、「所有権者」を示すために石でできた杭が打たれて...

Comments


bottom of page