日本の医療(歯科医を除く)システムは、8000施設の病院と110000施設のクリニックで構成され、実に93%超がクリニックです。 日本型医療は、入院、外来、在宅の多様な医療機能が集積され、グループ診療や機能ユニットの導入など、生産性の向上に積極的な「少数の病院」と、主に医師一人で診療しているため、病院に比べると生産効率の低い「大多数のクリニック」という二極構造で出来ているといえます。本来は高度化する医療ニーズに特化して対応したい大病院ですが、一般の外来にもリソースが割かれ、普段使い・コミュニティ感覚で高齢者がクリニックに通うコンビニ受診が、これまでの日常風景でした。2018年度で43.4兆、2025年予想では65兆円に及ぶ国民医療費の膨張に対応するための生産性の向上と、超高齢化に伴う高度な医療技術の必要性とは、言うまでもなく喫緊の課題です。この「大病院志向とコンビニ受診」と称される医療システムの溝を埋める役割が期待されるのが、医療モールという訳です。医療モールとは、「診療科目が異なる複数のクリニックと調剤薬局が集合した医療施設」と定義されます。受診者にとっては①複数の診療科目を受診でき、時間とコストの節約になる②専門性の高い診察を受けることができる③付帯設備などのアメニティが高い、などのメリットがあり、クリニック事業者にとっては①駐車場や受付などの付帯施設の共用利用などによる開業コストの削減②駅周辺立地やショッピングモール併設などの利便性の高い場所での開業に伴う集客の期待、などが挙げられます。2000年以降に開業し始め、2003年には568億円、2005年には1155億円と急拡大しました。2019年の時点で医療モール数は約2500に及び、医療モール内の事業所は約11400にのぼっています。我が国全体のクリニックの1割が医療モール内に開業していることになります。その分布を見ると8割が東京県及び大阪圏などの大都市圏に集中しています。(伊藤敦氏資料)
このように時代の要請と日本の医療システムの溝を埋める役割とを期待され、成長して来た医療モールですが、実際は医療モール化すれば課題解決するわけでもなさそうです。
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