このようにして普及してきた医療モールですが、その商圏人口は20万人(田中敦氏)といわれ、様々な事業者による医療モールの開発とともに、次第に駅周辺での競合などの問題が顕在化しています。
これまで都心型医療モールは、商圏やポジショニングの優位性によって順調な集客につながり、問題が表面化しなかったのですが、医療モールの構造的な課題が浮かび上がって来たと言えます。
具体的には下記の2点が挙げられます。
患者数の減少に伴い、患者を取り合い、囲みこむ傾向に陥り、「紹介→専門特化→質の高い医療サービス」という好循環が崩壊する。
出身大学による派閥が強かったり、地方大学出身者を軽視する医学会の悪弊が、医療モール内に持ちこまれ、人間関係がギクシャクする。
医療モールは元々異なる開業医が集合する施設であり、統合的なマネジメントが難しい業態です。医療行為は高い医療情報を持つ医師と、患者との間に「情報の非対称性の大きさ」があることは以前から指摘されて来ました。病気や症状は曖昧で、この曖昧な状況の患者について個人の知見やスキルだけではなく、「高い専門性を持つ医師が共同して診療にあたる」という医療モールの本来のメリットが、逆に作用する状況になっているのです。
都心型医療モールの増加・競合化を踏まえて「クリニックを取り敢えず集めればなんとかなる」と言う、医療モール第一世代の限界と言えます。
医療モールにも「質」が問われる時代です。
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