【内容】
都市化の起源
中世都市の誕生
産業革命に伴う急激な都市化
1.都市の起源
都市が生まれるきっかけは、農耕と定住により、人間の集団生活(集落)から始まります。
農耕の発達が食料の余剰を産み、余剰生産物が富として蓄積されることによって、社会的な分業、都市住民が生まれたとされています。
集落のなかに、政治や行政、商業、手工業、防衛などを担う、非農業従事者が生まれます。
4大文明が生まれる穀倉地帯では、大規模な定住が進み、「都市国家」として発展します。
都市を形成させた要素で分類すると、宗教都市、政治都市、商業都市、産業都市に加えて、文化・学術が集中した文化都市などが形成されていきます。
さらに様々な都市国家は、抗争を繰り返す中で、より広大な領域と強大な権力とをもつ「王朝国家」に統合されていくのです。
2.中世都市の誕生
中世ヨーロッパでは、商工業が発達するとともに、「市場」が次第に規模を膨らませることによって、「都市」に成長します。
当初は封建領主の支配を受けていましたが、成長した「都市」は、次第に「自治」を求めるようになります。
中世ヨーロッパにおける自治都市の誕生です。
具体的には、
政治的独立性
自律的な法律の制定
司法や行政上の自主的な地位の確立
租税上の自律
市場権と独自の経済政策
などです。
ドイツやイタリアなどで、自治都市が多く生まれます。
自治都市は周囲を城壁で囲み、その中では市民が自由な都市生活を営み、「都市の空気は自由にする」と言われます。
ヨーロッパの都市で「〇〇ブルグ(ドイツ)」「〇〇ブール(フランス)」「〇〇バラ、〇〇バーグ(ともにイギリス)」という語尾の地名が多いですが、これらはいずれも「城壁」を意味しています。
都市を「生活のプラットフォーム」だと考える時、どんな価値を共有し、そのための権利と責務をどう担えば良いのか?
欧州の自治都市のあり方は、非常に参考になると考えます。
3.産業革命と急速な都市化
18世紀までは、都市の数はそれほど多くなく、その拡大・発展も緩やかでした。
19世紀のイギリス以降、産業革命による工業生産技術の発達と資本主義の発展が進むと、交通手段の発達とも相まって、都市への人口流入が加速し、各地で急速な都市化が進行します。
この急速な都市化により、住宅不足、生活環境の悪化、疫病の発生などの「都市問題」がおこり、これを対処する形で、「近代都市計画」が生まれます。
近代都市計画においては、「都市居住環境の改善」と「道路交通との調整」を主眼として、様々な理論が提案されます。
田園都市論(E・ハワード):人口3−5万人程度の自律的な田園コミュニティの形成。
機能主義の都市計画(L・コルビジュエ):人口300万人程度を想定し、工業化社会に対応して、高層住宅と高速道路で構成し、オープンスペースによって、太陽の光にあふれた居住空間を確保。
近隣住区論(C・A・ペリー):幹線道路で囲まれた小学校区を単位にして、公共・生活利便施設を配置し、徒歩圏で日常生活が完結できるように計画。
反・機能主義(J・ジェコブス):機能的・無機的な都市論を批判し、生活者優先志向で、高密度で様々な都市機能を奨励。
欧州都市における市民意識を前提にして、様々な都市計画論が議論され現在に至っています。
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