【内容】
上級インバウンドを魅了する日本文化
「根のある暮らし」
歴史まちづくりのメディア価値
1.上級インバウンドを魅了する日本文化
以前 日本総研主席研究員の藻谷浩介氏から伺った上級インバウンドについてのお話です。
「東南アジアから来る富裕層に、日本を案内する時に、[京都]を案内すると、半数の人は満足するけれど、半数には不満が残ります。そこで{金沢}に連れて行いくと、七割の人たちは満足してくれますが、三割には不満が残ります。最後に山陰地方の石見に連れて行くと、全員が満足してくれる。石見などの山陰地方には、東南アジアの富裕層が憧れる、日本文化が残されているのです。」
さらにこうコメントされました。
「日本国内ではトップクラスの{横浜みなとみらい}の都市景観も、シンガポールの[マリーナ・ベイ・サンズ]に比べてしまうと、ショボく見えてしまう。著しい経済発展とともに、ダイナミックな都市開発をしている、東南アジアの人たちにとって、日本の大都市は、憧れの対象では無くなっている事を自覚するべきです。レベルの高いインバウンドを魅了するのは、米国庭園誌が選ぶ「日本庭園ランキング」で20年連続トップになっている島根県の[足立美術館]のような、山陰地方に残る{非常に洗練されたプライベート空間}だと思います。」
このコメントに、歴史まちづくりを考えるヒントが有ると考えます。
2.「根のある暮らし」
世界遺産「石見銀山」の足元にある大森町に拠点を置く「群言堂」は、「復古創新:根のある暮らし」をコンセプトに全国30店舗を展開するライフスタイルショップです。
自分たちの土地に根を下ろし、それを幸せとして受け入れ、根のある暮らしを紡ぎながらファッションを中心に「衣・食・住・美」に関する様々な商品を提案しています。
近江地方にも和菓子メーカーの「叶翔寿庵」や「たねや」のように、その土地の風土を「コンテンツ」としてブランディングして行く企業が、多いのです。
近江八幡では、街づくりを進める中で、当初から「観光目的ではなく」としつつも、半世紀をかけて「観光の本望とは何か」を考えてきたといいます。
1962年にこの街を訪れた梅棹忠夫氏をして「今は京都においても失われつつある「気品と静寂」が、この街には残っている。人通りはほとんどないが、時代に取り残されているわけではなく、外観・内容共に生半可な都会の人よりも、はるかに近代的であり、都会的な暮らしをしている。」と評しています。
「根のある暮らし」を基本に、「どこで、何を発信するか?」は、個人のライフスタイルや企業活動にとって非常に重要ではないでしょうか。
3.歴史まちづくりのメディア価値
歴史まちづくりの一つのゴールはこのように「歴史コンテンツのメディア」としてのまちづくりではないでしょうか?
オンライン1stの時代に、他の商品・サービスと圧倒的な差別化を生み出す要素として「街の歴史・文化」を活用する姿勢です。
外観だけでなく、その街らしさ、風土、暮らし方を考え、独自のライフスタイルとして発信することで、正当性を纏い、ブランディングに役立てます。
海外ではイタリアのラグジュアリーブランドの「ブルネロ・クチネリ」が、ソメオロ村の丘の上にある、14世紀の城を本社として復元・活用し、地元の職人たちを質の高い従業員として雇い入れて、グローバル展開している事例が有名です。
類似の事例として、東京でも「虎や」があります。
それまでの10階建の近代的なビルを取り壊し、内藤廣氏設計により「木」をふんだんに使用した4階建の本店に新築しました。
自分たちのコンテンツを、グローバルに発信するメディアとして、歴史まちづくりを活用することは、非常に有効だと考えます。
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