【内容】
課題解決思考を超えて「未来」を考える
日本の文化・意識を生かす
日本ならではの「文化ストーリー」が武器になる
1.課題解決思考を超えて「未来」を考える
「アート思考が求められる時代」「文化の時代」と言われて久しいと思います。
もはや生活に必要な商品・サービスは一揃い手に入れてしまい、ある程度の機能・デザインの商品が、コモディティ化した現代社会では、論理的な課題解決型ビジネスに、閉塞感が漂っています。
「今」に対応した課題解決思考ではなく、「未来」へ向けた次の一手を繰り出す時に参考になるのが、これまでの流れ(文脈)としての「歴史」です。
「歴史」を踏まえて、従来の流れに「沿った一手」にするのか?これまでの流れを「変える一手」にするのか?
次の「一手」が有効になる確率は、自分の経験に基づく判断か?歴史の流れ・文脈を踏まえた決断か?で大きく異なるのではないでしょうか?
歴史まちづくりも同様で、綿々と続く「街の歴史」を踏まえて、その文脈に「沿う」のか?あえて「変える」のか?(=変えるのなら、どのような未来を描くのか?)が問われる時代になっています。
特にまちづくりの場合は、多様な関係者の合意形成が大切で、周囲に認められなければ、愛着を持って利用もされず、賑いも望めません。
2.日本の文化・意識を街に活かす
これから到来する文化の時代は「日本の時代」だと言う意見があります。
寿司やラーメンといった「和食」が世界で認められ、多様な食文化がインバウンドの魅力になっています。
独自進化を遂げたアニメやゲームなどの「コンテンツ文化」も人気です。
そしてそれらの背景にある「日本人の歴史と美意識」が、他に類の無い日本の強みとして、注目されているのではないでしょうか?
独立研究家の山口周氏によれば「美意識によるブランディングの潜在力では、日本とフランスとが、世界の双璧にある」と言うことです。
ただこれまでは「日本人の美意識」は、「衣・食・住」の内、「衣」や「食」では顕在化していますが、「住」の分野では、その潜在力が十分に発揮されていないようです。
3.日本ならではの文化ストーリーが武器になる
高度成長社会では、日本の街づくりは、交通利便性や経済合理性を、最優先に計画されてきました。
街に人格があるとすると、「のほほん」と生きてきた人の人生が「薄っぺらい」ように、何の躊躇いも無く、経済成長に身を任せてスクラップ&ビルドしてきた街は、根無し草のようで人格の深みも魅力も感じられません。
そして、人口減少に加えて、ネットショッピングの台頭や、コロナ禍を経たリモートワークの浸透によって、集積志向や規模の追求などの「文明面での差別化」は、限界に達していると考えられます。
成熟社会の日本では、歴史を踏まえた「根のある街づくり」が求められているのではないでしょうか。
人間の「原風景、原体験」は、成長・進化した時の記憶にあります。
同様に、「街の原体験」を発掘して耕し、未来コンテンツとして、どうストーリー化できるのかを検討するのです。
「ストーリーとしての歴史」を備えた街を舞台にする時、その街で活動する人たちのライフスタイルや企業活動にとって、文化的価値の高いコンテンツとして、世界にアピールすることが可能になると考えます。
日本ならではの「街の歴史・文化ストーリー」が、有効な武器になるのです。
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