top of page
検索

空白の30年を超えて シン都市経営 ②

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 2025年8月13日
  • 読了時間: 4分

【内容】

  1. 日本の戦後復興を支えた「価値創造の民主化」

  2. 「ヒト」より「カネ」重視への転換による変調

  3. 「QC思考」から 「VC思考」への進化の必要性



1.日本の戦後復興を支えた「価値創造の民主化」

岩尾さんは、日本の戦後復興を支えた原動力の一つとして、「価値創造の民主化」を挙げています。

これは「誰もが価値を生み出せる」という前提を軸に、報酬も比較的平等に配分される仕組みを指します。

具体的な例としては、故・石川馨皇寿氏が提唱した品質管理の基礎知識を「QC七つ道具」として平易にまとめ、それを日本国内に無償で普及させたことが挙げられます。アメリカでは大学院レベルの統計学とされていた知識を、日本では中卒・高卒の工場作業者が活用できるようになったのです。

経営者と従業員、株主と経営者、さらには自社と取引先といった利害が対立しがちな関係者までもが「協力して価値を生み出す」体制へと変革し得たところに、日本式経営の本質があると指摘しています。

いわゆる日本式経営においては、終身雇用や年功序列、企業別労働組合といった仕組みがよく注目されますが、これらはあくまで制度面の特徴にすぎません。

むしろ、中小企業にも広まっていた「価値創造の民主化」こそが、戦後から1980年代までのグローバル競争を勝ち抜いた大きな要因だと分析されています。

 

2.「ヒト」より「カネ」重視への転換による変調

ところが、日本が高度経済成長を経て豊かさの頂点を迎える頃、大きな転換期が到来します。

プラザ合意による円高と、冷戦終結後のグローバル化です。

これによって日本の通貨価値が上昇し、日本人の給与や国内の生産費用、日本企業の株価が国際水準から見て割高になりました。

そのため、企業は生産拠点を海外に移し、人件費の安い国で雇用を創出し、個人投資家も含めて日本の資金が海外へ流れるようになります。

日本企業は高くなった「円」を国内で吸い上げて、海外で使うようになります。個人投資家も同様で、日本は33年連続で対外純資産額が世界一位になっています。

円高とデフレが同時に国内を襲い、「ヒト」よりも「カネ」が希少資源として重視される時代へと移り変わっていきました。

こうした状況下では、ファイナンスを中心とした投資家対応やコーポレートガバナンスが注目されるようになり、企業も個人も「国内で価値を創る」ことの優先度を下げるようになります。

結果として、日本のGDP(国内総生産)の成長が鈍化し、「ものづくり大国」から「投資の国」へと変容していったのです。


3.「QC思考」から「VC思考」への進化の必要性

さらに、日本が先進国として地位を確立したことで、それまでの「欧米に追いつくための競争」から、「自らの目的を設定する競争」へと変わりました。

売れるのか分かっていれば簡単です。あとは高品質・低価格を実現するようがむしゃらに働けば必ず勝てます。努力がそのまま報われる競争です。

反対に、何を売るべきか、何なら売れるのかが分からないならどうでしょう。必死で高品質・低価格を達成しても、売上・利益につながるとはかぎりません。

かつては「高品質・低価格を達成すれば売れる」という明確なゴールがあり、日本はがむしゃらな努力で成果を掴んできました。

しかし、今や「何を売るべきか」「どのような価値を創造すべきか」を自分たちで考え、提案していかなければなりません。

そのため、品質管理(QC)の知識のみでは不十分になり、新たな価値を提案・実現するための経営知識、いわば「VC(Value Creation)の思考道具」を広く共有し合う必要があると言うのが岩尾さんの提案です。

これからの時代には、「誰もが応援したくなる未来」を提示できるかどうかが大きな鍵を握るでしょう。

そのためには、個々の組織や個人が「新しい価値を生み出すための仕組み」を無償で学び、活用し合うことが大切だと言うことです。

かつての品質管理が日本式経営を強固に支えたように、次世代の価値創造は日本の企業や社会全体の競争力を左右する大きな要素になるはずです。

QCからVCへ、大きく舵を切ることこそが、これからの日本に求められる重要な課題だといえるのではないでしょうか。

 
 
 

最新記事

すべて表示
方策2:“共体験”ドリブンのプログラム設計 日本バリュー都市 ⑧

【内容】 第1章 都市における「共体験」の意義 第2章 プログラム設計の具体像 第3章 都市に埋め込まれる導線と効果   第1章 都市における「共体験」の意義 現代の都市は、多様な文化や人々が集まり交差する舞台でありながら、その交流が十分に深まらないまま通過的に終わってしまう場面が少なくありません。 商業施設や観光資源は整っていても、それを通じて「人と人が一緒に体験する時間」をどう生み出すかが、都

 
 
 
方策1:4価値×都市要素のゾーニング実装 日本バリュー都市 ⑦

【内容】 第1章 「4価値」を都市に実装する意味 第2章 ゾーニングによる実装の方向性 第3章 街全体を「価値の地図」とする未来像   第1章 「4価値」を都市に実装する意味 現代の都市開発においては、単なる機能性や利便性だけではなく、人々がその街に愛着を持ち、心身ともに豊かに過ごせる環境づくりが求められています。 その実現のために、経済産業省が示す「日本のブランド価値」の四つの軸、すなわち Ca

 
 
 
基本方針 日本バリュー都市 ⑥

【内容】 第1章 国際的潮流と日本ブランドの追い風 第2章 都市開発における既存の課題 第3章 基本的視点と今後の実装方向   第1章 国際的潮流と日本ブランドの追い風 ここで、これまでの論点を整理しておきます。 近年、日本のブランド価値は国際社会で高く評価されています。 Anholt-Ipsos Nation Brands Index 2023において、日本は初めて総合1位を獲得し、「信頼できる

 
 
 

コメント


bottom of page