top of page
検索

第1章 今、街づくりをアップデートするのか メルボルンの街づくり ①

執筆者の写真: admin
admin
8月24日
読了時間: 3分

― 成長社会から成熟社会へ ―

【内容】

1.現在の街づくりは「高度成長という時代の解答」でした

2.しかし、街を取り巻く前提条件は大きく変わりました

3.これからは「文化を育てる街づくり」が求められます

 

1.現在の街づくりは「高度成長という時代の解答」でした

私たちが暮らしている都市の多くは、高度経済成長期に形づくられました。

人口が増え、都市へ人が集まり、住宅やオフィスが不足していた時代です。

街づくりに求められたのは、できるだけ多くの人が便利に暮らせる環境を、できるだけ早く整備することでした。

そのため、住宅地、商業地、オフィス街と用途を分け、道路や鉄道を整備し、大規模なビルや商業施設を建設することが都市開発の中心となりました。

不動産ディベロッパーは、社会が求める空間を大量に供給し、日本の経済成長を支えてきました。

住宅不足を解消し、人々の働く場所や買い物をする場所を整えたことは、日本社会にとって大きな役割だったと言えるでしょう。

つまり、現在の街づくりは、「成長社会」という時代の課題に対する最適な解答だったのです。


2.しかし、街を取り巻く前提条件は大きく変わりました

ところが現在、街を取り巻く環境は大きく変化しています。

人口は減少し、高齢化が進み、人々の働き方や暮らし方も多様になりました。

リモートワークやデジタル化が進み、「毎日同じ場所へ通う」ことが当たり前ではなくなっています。

さらに、人々は住宅やオフィスといった「場所」を所有することよりも、その場所でどのような時間を過ごし、どのような体験ができるかを重視するようになりました。

その結果、多くの都市で新たな課題が見えてきました。

立派なビルが建っていても街を歩く人は少ない。

公開空地は整備されていても、誰も滞在していない。

オフィス街は夜や休日になると人影がなくなり、商業施設は価格競争やネット通販との競争にさらされています。

これは都市開発が失敗したということではありません。

むしろ、高度成長期の街づくりが成功したからこそ、社会の課題そのものが変わったのです。

私たちは今、「建物をつくること」では解決できない時代に入っています。


3.これからは「文化を育てる街づくり」が求められます

では、成熟社会の街づくりには何が必要なのでしょうか。

私は、その答えは「建物」ではなく「街で過ごす時間」にあると考えています。

人が歩きたくなること。座りたくなること。誰かと話したくなること。もう一度訪れたくなること。

こうした日常の小さな行動が積み重なることで、人は街に愛着を持ち、その街ならではの文化が育っていきます。

今回訪れたメルボルンは、まさにそのことを実践している都市でした。

街の至るところにカフェがあり、人々は公園や広場、ヤラ川沿いで思い思いの時間を過ごしています。レーンウェイには小さな店が並び、図書館は「本を借りる場所」ではなく、市民が一日中過ごせる文化サードプレイスとして機能しています。

そこには、「街を管理する」という発想ではなく、「街を育てる」という考え方がありました。

街づくりとは、建物を完成させることではありません。

人が自然に滞在し、交流し、文化を育て続けられる環境をつくることです。

本シリーズでは、メルボルンで学んだ数多くの事例を通して、成熟社会にふさわしい街づくりとは何かを考えていきます。

それは海外の先進事例を紹介することが目的ではありません。

日本の街を、これからどのようにアップデートしていくべきか。そのヒントを探す旅でもあります。

 
 
 

最新記事

すべて表示
第1章 今なぜ「参加デザイン」が必要なのか:参加デザイン論①

【内容】 1.集客の時代が変わった 2.「集める」だけでは続かない 3.これからは「参加」を設計する時代へ 1.集客の時代が変わった 「どうすれば、もっと多くのお客様に来てもらえるだろうか。」 これは、商業施設や文化施設、スポーツ施設、観光地など、多くの集客施設が長年考え続けてきたテーマです。 これまでは、新しいイベントを開催したり、有名人を呼んだり、広告を増やしたりすることで集客を図って

 
 
 
第10章 Stayable TownからLovable Townへ

― 成熟社会が目指す新しい街づくり ― 【内容】 1.Walkableだけでは街の魅力は生まれません 2.Stayableが街への愛着を育てます 3.街づくりは「文化を育てる仕事」になります 1.Walkableだけでは街の魅力は生まれません 近年、日本でも「ウォーカブル(Walkable)」という言葉を耳にする機会が増えました。 歩きやすい歩道を整備し、自動車中心だった街を、人が安心して歩ける街

 
 
 
第9章 街の行動OSという発想

― 空間をつくる時代から、行動を育てる時代へ ― 【内容】 1.魅力的な街には「行動のきっかけ」があります 2.街の行動OSが日常を豊かにします 3.街づくりは「管理」から「誘発」へ 1.魅力的な街には「行動のきっかけ」があります メルボルンを歩いていて、もう一つ気づいたことがあります。 それは、人々が特別な理由もなく、自然に街で過ごしていることでした。 朝のカフェでコーヒーを飲む人。 ヤラ川沿い

 
 
 

コメント


bottom of page