これまでの街づくりと社寺仏閣との関係を整理し、これからのあり方について、検討します。
【内容】
今昔の街づくりでの位置付け
都市における社寺の可能性
シビックプライドの拠点としての社寺整備
1.今昔の街づくりでの位置付け
江戸時代までの社寺は、街づくりにおいて、大変重要な位置を占めていました。
門前町では、神社や寺院を中心に街が形成され、城下町でも、武家地、町人地、寺社地などに町割りされて計画していたのです。
ところが戦後以降は、「政教分離」の観点から、街づくりにおける「タブー」として、社寺との関わりは希薄になります。著名な社寺が存在しない地域では、社寺の敷地に「触れない」ように注意するだけで、その存在に配慮しないコンセプトで、市街地整備が計画されてきました。
道路の整備や再開発などの都市計画において、社寺の存在や意義を認識し、積極的に活用することはなかったのです。
2.都市における社寺の可能性
都市内の社寺は、庭園や境内などが貴重なオープンスペースであり、災害時には地域の人々にとって安全で安心な場所になります。さらに社寺の様々な施設は、文化財に指定されている事も多く、地域の歴史、美しい景観など歴史的・文化的な価値の高い拠点とも言えます。またソフト的な視点から見ると、社寺は葬祭や布教の場として、宗教的・心理的な存在であると同時に、寺子屋が開設されたり、地域の相談所などの役目を担う、地域コミュニティーの核として存在してきました。
また近年は、若い女性による「御朱印集め」やパワースポット巡りや、外国人観光客にとっては、日本らしいシンボル施設として、注目を浴びています。
このように都市における社寺は、公共的、文化的、観光的な観点から、非常に重要なポテンシャルを秘めていると言えます。
3.シビックプライドとしての社寺整備
政教分離のしがらみの中で、行政が特定の宗教や社寺を「援助していないこと」を、証明することは難しく、行政サイドからの積極的なアプローチは期待できません。
社寺の整備には、個々の社寺が自ら持っている資産と可能性を、再調査して洗い直すことから、行動を起こす必要があります。
その上で、社寺と生活者との距離を、縮める取り組みが有効です。商店会や企業などと連携し、市民自らの施策として、機運を盛り上げていくのです。
社寺が存在する地域において、街づくりの観点で担うべき役割をしっかり抑え、人的連携を通じて、シビックプライドの拠点として位置付け、行政が進める様々な街づくり施策とパッケージ化していくことが重要といえます。
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