日本におけるツーリズムの変遷を振り返ってみると、「旅好き」な国民性が浮かび上がってきます。江戸時代の「おかげ参り」は有名ですが、観光の基盤となる交通機関、旅館の整備、観光資源の保護などは、明治時代の比較的早い時期になされていたようです。明治末期から大正時代にかけては修学旅行が定着し、温泉地では浴衣姿によるそぞろ歩きなど、いわゆる「マスツーリズム」が一般化していました。欧米においてはフランス、スイスを中心に第二次大戦後にツーリズムが普及したことと比較しても、その普及の早さが特筆されます。戦後の経済成長に伴い1955年頃にまず国内観光が盛んになり、10年遅れて国際観光の人気が高まり、1970年代には観光の大衆化、大量化の弊害として環境破壊が叫ばれるようになりました。
この動向を受け、マスツーリズムに代わって「ニューツーリズム」が提唱されるようになります。旅のスタイルは団体中心から個人中心に変わり、かつての「物見遊山パッケージ」では納得しない層が増え、ショッピング、美術館巡りやスポーツ・リゾート休養、産業観光、グリーン・農業体験、アニメ・映画ロケ地など様々なテーマでの観光が生み出されていきました。日本人の「ジッとしていられない」「居る間は何かしていたい」好奇心を持って「未知の場所や体験に挑戦したい」と言う性分が反映されているようです。
さらにオンラインによる情報流通とOTA・ネット直販が一般化すると、ネットで調べて申し込み現地集合・解散というスタイルの「着地型観光」が普及し出します。様々な体験型プログラムが生まれ、旅の目的や嗜好の多様化を踏まえれば、当然の流れと言えます。ただ着地型観光の消費単価は5000円〜10000円で、大部分は観光振興を目的にした補助サービスとして運営されているのが現状です。地域や運営者の期待は高く、経験者の満足度が高い反面、認知度は低く、まだまだ観光産業の新しい潮流としては、発展途上と言わざるを得ません。この「着地型観光」の未熟さに観光産業の根本的な課題があると考えます。
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