コロナ禍で苦しむ観光産業の救済手段として、俄かに注目されているのが、ワーケーションです。Workと Vacationを合成した造語で、観光地におけるリモートワークと言い換えられます。経済同友会の提言書を筆頭に、観光産業関連の様々な提案書がワーケーションを大きな柱として取り上げています。リモートワークで場所を選ばずに仕事ができることが証明され、非日常利用が中心であったホテルを日常利用する方策として分かりやすいと思います。帝国ホテルをはじめ様々な都市ホテルが、既に定額利用サービスを打ち出していますから、そのリゾート展開と考えられるかも知れません。これまで時間的・場所的な繁閑期の偏在という観光業の大きな課題も解決できそうで、矢野経済研究所による研究でも、699億円(2020年)から3622億円(2025年)と、市場規模の急速な拡大が予想されています。
一方ワーケーションの課題も明らかになりつつあります。最も指摘されている「労務管理」ですが、リモートワークと同様に考えればさほど大きな問題ではないと推察されます。会社での同調圧力に対しても、1ヶ月間南の島でワーケーションを楽しむというのは現実的ではありませんが、週末の前後を1日ずつ増やして三泊四日の旅行を楽しむという感覚であればハードルが低そうです。週休3日制を導入する企業も現れ出し、国内であれば手軽に活用できそうで、優秀な人材、特に不足すると言われる IT人材をリクルーティングする上でも納得感が高いと考えられます。
あとはハード面で通信環境を整えたり、客室とは別にニーズの高い個室型のビジネススペースを設ける事など必要でしょうか。
さらに一歩進んで広い意味での福利厚生サービスの一環として、交通費や宿泊費の補填制度などが整うと非常に利用しやすくなります。年末年始や盆休みなどの大型連休に集中しがちな、観光地混雑の緩和と同時に、観光産業の雇用問題をもとにした人材不足やサービス低下に対して有効な方策になるかも知れません。将来的な移住につながる「プチ移住効果」も期待できそうです。
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